未来の不安や過去の後悔から解放される

茶道の所作は、すべてにおいてゆっくりで丁寧です。お茶碗を持つ手、お湯を注ぐ動き、茶筅を振るリズム、そしてお茶をいただくときの呼吸。

茶道
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こうして五感を使って一つの動作に意識を向けることで、頭のなかにある未来の不安や過去の後悔から解放され、今この瞬間だけに意識がとどまるようになります。

これがまさに、瞑想の基本です。その静かな所作が、心を今に戻し、心のざわめきを鎮め、散らかった思考を整えてくれるのです。

現代の生活は情報があふれ、いつも何かに追われがちです。頭も心も忙しく、働き続けていると、ストレスは知らず知らずのうちにたまっていきます。

忙しい現代こそ、お茶が瞑想になります。現代人の多くは、つねに何かを考え、急いで行動し、心が休まる暇がありません。

そのようなときに、ほんの数分でもお茶を点てる時間を持つことで、心に間が生まれます。その間こそが、心のバランスを保つ鍵。茶道が長いあいだ人々の心を癒してきた理由は、まさにここにあるのです。

「今」の自分に寄り添う時間を持つ

ひとり茶道は、自分を整えるためのやさしい習慣であり、心のセルフケアでもあります。気軽にお茶を点ててみるだけで、自然と瞑想のような心地よさを感じられるはず。

ただ静かに、今の自分に寄り添う時間を持つこと。それこそが、茶道が昔から伝えてきた癒しと調和の力なのだと思います。

たった一服のお抹茶に心を委ねるだけで、重い気持ちも、ふっと軽くなっていきます。