「人前で話すのが苦手」という人は多いです。しかし、その原因をきちんと分析し、簡単な練習をつみちょっとしたコツを掴めば必ず改善できます。
人と話すと心拍数が上がる、声や手が震える、汗が出てくるなどの症状は、「対人不安」から生じています。それなのに多くの話し方教室では十把一絡げに、「あがり症は場数を踏めば治る」と説明しています。しかし残念ながら「あがり症」は場数では治りません。少な くとも、緊張しながらの場数をいくら踏んでも改善は見込めません。これはスキル不足の問題ではなく、脳のメカニズムの問題だからです。
そもそもなぜ人はあがるのでしょう。実は、「あがり」は脳が正常に働いている証拠でもあるのです。私たち人間の脳は生命維持のためのセキュリティ機能を備えています。たとえば、危険を察知したとき私たちの体はとっさに飛びよけますよね。これは脳のセキュリティシステムが物理面から生命を守ろうと作動した結果です。同様に脳は精神面からも生命を守ろうと働きます。
アメリカの心理学者ウィル・シュッツは、人の自尊心には「好かれたい、理解されたい」という“自己好感”、「重要な存在として認められたい」という“自己重要感”、「有能であると評価されたい」という“自己有能感”の3つの欲求があると唱えました。大げさにいえば、私たち人間にとって自尊心とは精神面での生命そのもの。それが傷つけられるかもしれないと感じた瞬間、脳は「あがり」というアラームを鳴らすのです。