※本稿は、加藤俊徳『1万人の脳を見た名医がつきとめた 機嫌の強化書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
自分が不機嫌なのは、“相手の振る舞い”のせい
日常の機嫌値が下がる要因は主に自分自身にありますが、日々の機嫌が損なわれる要因は外からやってきます。不機嫌の原因となるのは、情報や環境、そして何よりも多いのは他者の振る舞いでしょう。
他者の振る舞いによって不機嫌になったとき、まず私たちが注目するのは「腹が立った」「悲しくなった」「傷ついた」といった自分の感情です。これは自然な反応なのですが、なるべく機嫌よく平穏に過ごしたいのなら、もう一つ目を向けてほしいものがあります。
それは、相手の脳です。「相手はどういう考えや感情、価値観によって、その振る舞いをしたのだろうか」と、相手の脳内で起こっていることを想像してみるのです。
一例を挙げましょう。あるご夫婦の話です。
二人はよくドライブに出かけるのですが、その道中で決まって喧嘩になるといいます。たいていは、運転役の夫が、助手席の妻に道案内をお願いすることが喧嘩のきっかけになるそうです。実は妻は地図を読むのが苦手で、おまけに運転免許も持っていないので、道案内がうまくできない。それに苛立つ夫に強い言葉で責められて、いつも傷ついているというのです。
「この人は私のこと大好きなんだな」と思うようにする
楽しいはずのドライブで喧嘩になるのは避けたいし、もう傷つきたくもない。だから妻は毎回、「もう私に道案内を頼まないで」と伝え、夫もその場では「わかった」と言うのですが、いざドライブが始まると、やはり道案内を頼まれ、同じように喧嘩になってしまうそうです。
そこで妻が、しきりに首をかしげていたことがあります。妻ではなく知人を車に乗せて出かけるときの夫は、特に道案内など頼まず、迷ったりもせずに目的地まで到着しているらしいのです。
「私と出かけるときも同じようにすればいいのに、なぜ、よりによって地図を読むのが苦手で運転もできない私に、いつも道案内をさせようとするのか……」
ここまで聞いて、私には、その夫の脳のなかが少し見えた気がしました。
おそらく、夫はドライブという冒険を、妻と一緒に成し遂げたいのでしょう。自分が一方的に妻を目的地に連れて行くのではなく、その道のりを奥さんとの共同作業にしたいのではないかと推察できるのです。
そう伝えると、妻は少し腑に落ちたようで、「では、これからは道案内を頼まれるたび、“この人は私のことが大好きなんだな”と思うようにします」とおっしゃっていました。
おそらく、このご夫婦は、これからもドライブするたびに喧嘩をするのでしょう。それでも、妻のほうに夫の言動に傾聴しながら、相手の脳にも目を向ける意識があれば、もう、「一方的に傷つけられた」という認識にはならないはずです。


