仕事ができる人、できない人の違いはどこにあるのか。脳内科医の加藤俊徳さんは「仕事ができる人は機嫌をコントロールすることに長けている。不機嫌になる要素をうまく切り離すことで、仕事のパフォーマンスは上げることができる」という――。(第3回)

※本稿は、加藤俊徳『1万人の脳を見た名医がつきとめた 機嫌の強化書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

空を眺めるビジネスマン
写真=iStock.com/RyanKing999
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不機嫌になると脳が成長しなくなる

私は機嫌というものを脳のセンサーと捉えています。上機嫌は、脳が成長と変化という本質的性質をいかんなく発揮しているというサイン。不機嫌は、何らかの要因により、その本質的性質を発揮できていないサイン。このように捉えるのは、特に不機嫌なときに非常に重要です。

本書で述べたとおり、不機嫌なのは脳が本来の機能を発揮できていないということ。言い換えれば、不機嫌な脳は成長しません。

脳細胞は生きるために絶えず働いて循環しています。それを内的および外的要因が止めるように作用するのは、すなわち、極端な言い方をすれば「死」につながることなのです。

となると、不機嫌なときに私たちがすべきことは何でしょうか。感情に任せて行動したり言葉を発したりと、周囲を自分の不機嫌に巻き込んでも、いいことはありません。効果があるとしても対症療法的に少し気分がよくなるくらいのもので、脳の成長を止めているという根本問題は何も解決されないからです。

細胞には思考も意思もありませんから、もちろん、細胞自身が不機嫌になるのではありません。「生きるために働いて循環している」という細胞の性質が妨げられたとき、生命の危険を察知した脳が、生体の生存本能として不機嫌を発露させる、その人に不機嫌な表現をさせるという機序(メカニズム)なのです。

脳は“毎日が違う”状態

脳は毎日、違います。日常の機嫌値を上げる工夫をしてもなお、内的および外的要因により、ときには不機嫌状態になります。同じことをしても、同じ成果が出るとは限らないのも、そのためです。

しばしば「昨日はこれくらいできたのに、今日はぜんぜんできない」ということが起こる。なまじ成功体験があるだけに、そんなときは「どうして昨日はできたことが、今日はできないんだろう」と不思議に思い、落ち込むかもしれません。

でも、それは何らかの要因により、脳が生来の働きを発揮できていない不機嫌状態にあるからと考えるといいでしょう。

「脳は一日いちにち違う」という前提を意識すれば、それは何も不思議なことではないし、落ち込むようなことでもないとわかるはずです。

したがって、不機嫌なときは、まず「脳細胞が生来どおりの機能を発揮できなくて困っている」と気づくこと。これが、機嫌強化の第一歩です。

すると、では脳を困らせているもの、脳細胞を生来どおり働けなくさせているものは何か。自分を萎縮させる誰かのハラスメントか。激しく傷ついた過去の出来事か。あるいは不快な環境か。昨日の睡眠不足か――という具合に原因を究明していけるため、いっときの憂さ晴らしではなく、機嫌そのものにアプローチできるというわけです。