いつも機嫌がいい人は、何が違うのか。脳内科医の加藤俊徳さんは「睡眠不足に陥っている人は、機嫌が悪くなる。脳内の不要物の処理や感情のリセットなどが中途半端に終わっているからだ。体内時計にもとづくと、“この時間までには寝てほしい”という上限がわかった」という――。(第2回)

※本稿は、加藤俊徳『1万人の脳を見た名医がつきとめた 機嫌の強化書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

ベッドで眠る男性
写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです

睡眠不足が続くと“不機嫌”になる

眠っている間、私たちは単に身体を休めているだけではありません。次のような、生体の維持・向上のためのさまざまな処理が行われています。

・記憶の整理、定着
・日中の活動で生じた脳内の不要物(アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドベータやタウタンパク質など)の処理
・不安や恐怖の軽減など、感情のリセット、調整
・神経回路の再構成(重要なシナプスは強化され、不要なシナプスは刈り込まれる)
・成長ホルモンの分泌、自律神経の調整、免疫機能の強化

眠りが浅い、あるいは睡眠時間が短すぎるのは、こうした睡眠中の処理がすべて中途半端に終わることを意味します。そう考えるだけでも、睡眠不足がいかに脳や肉体に悪影響を及ぼすか、ひいては不機嫌になりやすい脳の状態を生み出すか、想像がつくのではないでしょうか。

「深く長い睡眠」は「高い意欲と幸福感」につながり、「浅く短い睡眠」は「低い意欲と幸福感」につながります。睡眠不足が続くと日常の機嫌値は低い水準が常態となり、「いつも不機嫌な人」になりかねないのです。

そこで、機嫌を強化するための具体的な「睡眠戦略」を考えてみましょう。

理想の睡眠は「最低でも8時間」

実は、この3年間ほど、私は努めて「より長く眠る」ようにしてきました。いったい何時間眠ったら、脳のパフォーマンスが一番上がりやすいのかを自身の身体で試すためです。

思い返せば子どものころ、私は夜8時前に寝て、朝6時に起きていました。それが成長するにつれて短くなり、近年では平均して一日6時間未満。もともと感情の起伏は激しくありませんが、睡眠時間を長くすればもっと脳の働きがよくなり、感情的にも平穏に、機嫌よく暮らせるのではないかと思いました。

そこで少しずつ睡眠時間を延ばし、つい最近、9時間連続で眠れるようになってきたところです。そんな私の実感としては、最低でも8時間、できれば9時間は眠ることで、日中の脳の覚醒度が上がり、パフォーマンスは格段に高くなります。明らかに私の脳は以前よりも上機嫌になっている、そう感じるのです。

ただ、睡眠時間が短い人が急に8〜9時間も眠るのは難しいでしょう。私も平均6時間未満だったものが1年間の平均で8時間半以上眠れるようになるまでに、3年ほどかかりました。みなさんも、少しずつ長く寝るようにする意識で、焦らず、徐々に睡眠時間を増やしていってください。きっと睡眠時間が30分延びるごとに違いを感じるはずです。