明治製菓は、1999年に業務用のチョコレート原料を企業に対して売る新規事業・カカオ事業部を始めた。「明治製菓の辺境」とされた事業部は、10年後に売上70億円をたたき出す。そこにはどんなドラマがあったのか。事業部を率いた山本実之さんの著書『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』(PHPビジネス新書)より、一部を紹介する――。(第2回)
カカオ豆
カカオ豆(写真=Mikkel Houmøller/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

新規事業でも明治が持っていた強力な武器

私たちの最大の強みは、カカオ豆の取り扱い数量です。

明治製菓は有難いことに、最終商品すなわちBtoCの分野では、当時からチョコレート業界のシェアナンバー1の地位にありました。

それゆえにカカオ豆の輸入量は莫大です。輸入する原産国も多いので種類も豊富。それは商品バリエーションの豊かさにつながります。

お客様の要望の細かい部分にまで対応できるだけでなく、さまざまな組み合わせを使って新しい提案もできます。

その提案をするときも、BtoCの豊かな経験が、他社にはない特徴となりました。

ライバルである原料メーカーさんはBtoBが専門であり、その分野で新参者の私たちは、何歩もリードされています。

しかし裏を返すと、私たちは「BtoBだけ」の他社と違って「C」を知っています。それはエンドユーザーの視点に立てる、という圧倒的な強みです。

飲食店経営やお菓子の製造をしているお客様にとって、エンドユーザーの好みや、今後何が求められるかは非常に気になるところ。そんなとき、

「今、若年世代にはこういう味が好まれています」
「このフレーバーは今後、大きなトレンドになると思われます」

といった話は貴重な情報になります。

こちらから質問する「呼び水型」

「明治の原料部門と仕事をすれば、ほかでは聞けない話が聞ける」

というメリットを感じてもらえたら勝てる。そう意識するようになりました。

すると、宿題の取り方にも応用が効くようになってきます。相手の質問を待つのではなく、こちらから質問する「呼び水型」のタスクゲットです。

たとえば、「これから○○のトレンドが来ます。何かご準備はされていますか?」と聞き、興味を持ってもらえたら「こういう原料があるので今度お持ちします!」。

強みの明確化による「攻め」のアプローチで、私たちはまた一歩、前進しました。

「現物の説得力」も大いに駆使しました。

組み合わせや配合を変えた試作品を用意し、バリエーションの豊かさをアピール。この場面で大きな助けとなったのが、開発部門の協力です。現物をつくってもらえるだけでなく、研究員が営業に同行してくれることが増えました。業績が上がってくると、他部門の協力が格段に得やすくなるのです。