※本稿は、東えりか『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』(集英社)の一部を再編集したものです。
病名がつかない夫の病気の正体が知りたくて
駒込病院のセカンドオピニオンには、私の実妹が付き添ってくれた。
彼女は長く保育士として勤め、いくつかの公立保育園で園長の経験がある、かなり肝の据わった人なので心強い。面会の約束時間の1時間以上前に到着し、受付でデータを渡し、一緒に待合室に座って待った。
保雄の勤務先に来るのは初めてだ。驚いたのは、待合室の人の少なさだった。あとで知ったが、当時の駒込病院はコロナ患者の受け入れ病院として新患を制限せざるをえなかったという。ひとつの長椅子に整然とふたりずつ腰掛けられる余裕があり、渡された手元のブザーが振動するので、館内放送や声による呼び出しがない。
そうか、保雄の入院している病院になぜあんなにイライラさせられたのかがわかった。各科の呼び出し放送が、競い合うように大音量だったからだ。
セカンドオピニオンを引き受けてくれたのは腫瘍内科部長の下山達医師。すらりとしてシャープな印象で、少し近づき難い感じがした。だが診察室で前に座ると、「大変でしたね」と柔らかく声をかけてくれた。緊張して苦しいほどの胸の中が、一瞬緩んだ。ここでも録音の許可を取った。
病の正体は「原発不明がん」
渡した保雄のデータはすでにパソコンに映し出されており、私との面談が始まるまでの1時間で同じ科の医師と最初の症例検討も行われたという。
挨拶もそこそこに、すぐにデータを映したモニターを見ながらの話が始まった。
下山医師の話は以下の通りである。
・まだ、現病院で診断が付いていないという状態は理解した。今後、診断が変わる可能性があるが、現段階ではもらったデータからの判断、説明になるということは理解してほしい。
・チームで検討した結果、東さんのがんは「原発不明がん」ではないかと診断する。

