最強なのは「教えてください」というスタンス
年上との信頼関係において、「謙虚さ」は最強の武器であり、同時に失った瞬間に信頼を壊す最も危ういポイントでもある。
もちろん、ここで言う「謙虚さ」は、卑屈になることではない。自分がどれだけできるかよりも、相手から何を学べるかという姿勢を持ち続けられるかどうか。それが本質だ。たとえば、少し成果が出てきた若手が、無意識に口にするひと言。
「それ、今はもう古くないですか?」
「僕の業界では、もうそういうやり方しないんですよね」
本人に悪気はなくても、それは“自分の価値観が上”だと宣言してしまっているのと同じだ。年上の多くは、成功も失敗も、長い時間の中で自分なりに選択を繰り返し、築き上げてきた。
その歴史に敬意を払わないまま、「自分のほうが効率的」「自分のほうが今っぽい」と語る若手に、「こいつにはもう何も話す気にならない」と感じるのも当然かもしれない。
では、どうすればその誤解を回避できるのか。答えはシンプルで、「教えてください」というスタンスを持ち続けることに尽きる。
正論を振りかざしても、応援はしてもらえない
「このあたり、自分ではまだわかりきれていない部分があると思うのですが、○○さんはどう考えていますか?」
「ご経験の中で、似たような場面ってありましたか?」
そんな風に、相手の経験を引き出す言葉を添えるだけで、会話の温度はまったく違ってくる。
謙虚な姿勢とは、「自分が正しい」ではなく、「相手から学べる何かがある」という前提で向き合うこと。その姿勢がにじみ出ていれば、たとえ主張をしても、「この子は筋がいい」「もっと育ててやりたい」と感じてもらえる。
一方、どれだけ正論を語っていても、そこに「教わる姿勢」がなければ、相手の心はすっと離れていく。謙虚さは、年上から応援されるための通行証のようなもの。その通行証をなくした瞬間に、どんな努力も届かなくなってしまうのだ。

