立憲民主党や共産党が支持を伸ばせないのはなぜか。世田谷区長の保坂展人さんは「自民党が自壊している好機なのに、野党は市民参加型の政治を望む有権者や保守化傾向にある若い世代の受け皿になれていない」という――。

自民党に勝つ絶好の機会でもリベラルが低迷するワケ

石破茂首相が退陣を表明し、早くも総裁選レースが動き出した。新総裁と今後の連立の枠組みなど政界再編に注目が集まるが、野党の動向についても検証したい。

7月の参院選では、自民・公明は大きく議席を減らし、与党は過半数割れとなった。その一方で、野党第一党の立憲民主党も改選22議席から上積みができず、政権批判の受け皿にはなれなかった。立憲民主党と選挙協力を行った共産党も、改選前の半分以下となる3議席にとどまった。なぜ、左派・リベラル勢力は振るわなかったのか。

既成政党への不満が高まる一方で、「日本人ファースト」に象徴される右派的主張を唱える参政党や、「手取りを増やす」を訴え、ポピュリズムを動かした国民民主党が躍進した。

【図表】第27回参議院議員通常選挙結果(2025年7月20日投開票)
出所=NHKが発表した開票結果をもとに編集部作成

東京都の世田谷区長を務める保坂展人さんは、かつて社民党の衆院議員として「自社さ政権」に参画し、自民党の議員たちとも政策の立案・決定などに携わってきた。

現在は、人口約92万人を抱える自治体の首長として、独自の政策に取り組んだことで保守層からも安定的な支持を得て、すでに4期目14年を数える。

ジャーナリストの亀井洋志がリベラル派の政治家の中で稀有な存在である保坂氏にインタビューし、国政でリベラル勢力が低迷している現状について原因を分析してもらった。

※インタビューは8月15日に実施しました。

立憲民主党の敗北

――参院選の結果、与党は非改選も含めて過半数(125議席)を割り、惨敗しました。その一方で立憲民主党は獲得議席が横ばいの22議席にとどまり、野党第一党としての存在感を示すことができませんでした。この結果をどう分析されますか。

【保坂】立憲民主党は獲得議席数だけを見れば現状維持ですが、事実上の敗北といわざるをえません。全国に32ある「1人区」のうち17選挙区で共産党の候補者が降りています。

一方で、保守票の食い合いも起きました。参政党が全選挙区に候補者を立て自民党の票を削ったことを考慮すれば、立憲民主党はかなりの苦戦だったと見るべきでしょう。事実、比例代表の得票数は国民民主党、参政党の後塵を拝し、野党3位でした。

有権者からすれば、石破茂首相と野田佳彦代表は同質・同類の政治家に見えたのではないでしょうか。二人は同じ年齢で、党首討論で互いを「(1990年代の)政治改革を知る世代の政治家」として評価し合っています。

選挙前から選挙後に至るまで大連立の噂が絶えないのも、両氏の関係に、自民党と立憲民主党の差異よりも共通項を感じる人が多かったからではないでしょうか。