最初は投資ではなく、日々の業務に生成AIを活用していました。主催する勉強会で企業のIR説明会を開催しており、そのテキスト化やまとめ作業をクロードで行っていたのです。その後、投資家仲間からチャットGPTのディープリサーチの利用を強く勧められ、現在は多用途に使っています。
よく利用するのが、投資レポートの作成です。時価総額1兆円を超える大企業を一から調査するのは大変なのでチャットGPTに詳細なレポートを作成してもらったり、よい決算を出した企業がどんな事業をやっているのかを急いで調べたりしてもらいます。
企業の開示文書を要約するのも便利です。TOB(株式公開買付)やMBO(経営陣による買収)において、企業から出される開示文書は数十ページから、ときには数百ページに及びます。そうした文書をスクロールして全貌を把握するのは骨が折れるので、チャットGPTに投げて概要をまとめてもらいます。その概要をベースに、さらに掘り下げた事実確認をしたり、株価への影響を分析したりもします。
また、信用取引の「増担保規制」が解除になる条件を調べたり、IPOの目論見書に出てくる「シンジケートローン」など、「これはどういう意味だっけ?」と思うような専門用語が出てきたときも、検索エンジンを使わずにチャットGPTに質問します。そうしたほうが追加の質問もしやすいですし、質問履歴がAIのサーバーに残るので、あとから見返すときにも便利です。
ニュースになった出来事が、市場にどう影響するかを分析してもらうこともよくあります。最近ではトランプ関税ショックのとき、壁打ちのようにAIと問答を繰り返しながら、株価への影響シナリオを言語化していきました。
投資に生成AIを使う最大のメリットは、投資判断が早まることです。といっても、判断を生成AIに委ねるわけではありません。3つぐらいの値動きのシナリオをつくってもらうケースが多く、どれが確率が高いかを自分で考えてベットするという感覚です。
たとえば、今年の3月に上場したJX金属の場合、上場直後にチャットGPTに投資レポートを作らせ、上場後の値動きのシナリオをいくつか提示してもらいました。同社のような大型のIPOのケースでは、上場後に少し株価が下がり、そのあとインデックスファンドなどの機関投資家の買いが入って上昇に転ずるパターンがよくあります。すると8月の決算発表で今年度の最終利益見通しの上方修正があり、株価が上昇に転じる初動の段階で素早くエントリーできたのです。それは生成AIで事前にシナリオを用意していたからこそ可能だったと思います。
AIの「性善説」に注意! 逐一疑問を投げかけよう
とはいえ、生成AIをあまり信じすぎないようにはしています。生成AIは基本的に「性善説」で動く傾向があります。企業が発表する文書や経営陣の発言はすべて正しいという前提で受け止め、そのように投資レポートを提示してきます。しかし、企業は投資家に株を買ってもらうため、自社をより良く見せようとするものです。
それに対して投資する側は「なにかリスクはないの?」「ここは見通しが楽観的すぎないか?」などと逐一疑問を投げかけなければいけません。それらの疑問がすべて解消されてはじめて、納得して投資できるわけです。最終的には企業に問い合わせたり現地調査をしたりして裏をとることが必要で、そこは人間がやるほかありません。
AIの指示で株を買ったりポートフォリオを変えたりして損をした場合に、AIは決して補填してくれません。AIは意見はするけれど責任は取らないのです。したがって参考にはしても、その回答をまるまる信じて株を買うことはありません。
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