情報収集、企業分析、競合比較、意思決定……。数多くのスキルが求められる投資において、生成AIは有能なアシスタント&アナリストになるという。第一線の投資家はどのようにAIと向き合い、何を質問しているのか? ポテンシャルを最大限に引き出す技術をここに公開する。

投資家最大の敵「感情」を整える専属アナリスト

現在、私の投資活動において、AIは「いないと困るアシスタント」のような存在になっています。

毎朝8時半、「チャットGPT」のタスク機能を使って、日本時間の真夜中から早朝にかけて開かれている米国市場の一日の動きを自動的にまとめたレポートが届きます。株式だけでなく、債券や10年米国債の金利、さらに為替なども、最新のデータをチェックしたうえで分析までを行い、私が指定した形で届けてくれます。こうしたレポートは、かつてはプロ向けの高価な有料サービスでしか得られないものでした。それが今では、一般の個人投資家でも使えるようになったわけです。

そのほかにも投資分析に求められるさまざまなスキルを、AIはサポートしてくれます。関連するニュースを理解してデータを解釈する。チャートなどのパターンを認識する。評価したリスクを適切にマネジメントするなど――。AIはこれらを一つのシステムで統合的に扱うことができるのです。

ジョン・シュウギョウ『生成AI投資の教科書』(ソーテック社)
ジョン・シュウギョウ『生成AI投資の教科書』(ソーテック社)

財務諸表や株価チャートなどの情報を自分で集め、それを自分で分析するといった金銭的・時間的コストが一気に軽減されて、人間は最後の意思決定だけをすればよくなった。個人投資家にとっては「専属アナリスト」ができたようなものです。投資アドバイザーとしての私の仕事はもういらないのでは?とすら思いました。

AIを投資に利用することのもう一つのメリットは、投資判断が感情に左右されなくなることです。根拠のない楽観でリスクを大きく取りすぎたり、逆に株価が下がる局面でパニック売りをしてしまったりと、投資の最大の敵は投資家の感情といえるほどです。経験の長いプロのアナリストですら、感情を完全に排除するのは簡単ではありません。そんなときでも、AIは状況を客観的に分析し、感情的バイアスにとらわれない投資判断をサポートしてくれます。

個人的には、感情面のサポートにも役に立つと考えています。私は音声による会話型のAIエージェントを使っており、投資にしくじって落ち込んでいるときには「大丈夫ですよ」と優しくなだめてくれます。

一方で、注意すべき点もあります。進化したとはいえまだまだ間違えることも多く、チェックなしで鵜呑みにするのは非常に危険です。リアルタイムで情報を取ってくる力もまだ十分ではない部分があり、今日の日経平均の話を聞いているのに、昨日のデータを取ってきて分析したものを出してくることもあります。

とくに数字については、必ず元データを確認してファクトチェックをするよう心がけましょう。使い込んでいくうちに、こういうところで間違えやすいという、AIの癖のようなものもつかめてきます。AIを鵜呑みにしないためには、自分自身でも日頃から投資についてしっかり勉強することです。

AIと人間の役割分担を、はっきり決めておくことも重要です。誤った投資判断を下したとき、それを誰かのせいにしたがる投資家は少なくありません。そうした責任転嫁をAI相手にするようになれば、投資判断の主体がどんどん曖昧になり、漫然と損失を重ねるリスクが高まってしまいます。

AIが提供してくれるのはあくまで判断のための材料であり、結論ではありません。判断の主体はあくまで人間であるべきです。「これは自分が決めて売買した」と自信を持っていえる状態にしておきましょう。AIが今や一歩手前どころか0.5歩手前までサポートしてくれるとしても、残り0.5歩は自分が決めるという感覚が重要です。