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各党が参院選で掲げたキャッチフレーズ

結局のところ、現実の選挙戦では、政策の違いを理解させるだけのアテンションを有権者から集めるのは極めて困難である。だからこそ、わずか15秒のテレビCMのような施策がとても重要なのだ。こうした観点からすると、各党のワンフレーズのキャッチコピーである「日本を、取り戻す。」「安定は、希望です。」「暮らしを守る力になる。」などに対して、「なにを訴えたいのかわからない」と批判するのではなく、どういう層をターゲットにしているのかを考えてみるのは、思考実験としても面白いだろう。

そもそも新党にとって最も重要なことは党名の認知であり、そのためには手段を選ばない。業界では、公明党は明るい選挙推進協会(明推協)の前身の「公明選挙連盟(※2)」、みんなの党は明推協や選挙管理委員会などのキャッチコピーだった「みんなの選挙」から党名を採ったという説もあるぐらいだ。

もうひとつの差別化戦略であるニッチな政策での先鋭化は、今回の参議院選挙においても鮮明であった。防衛・外交問題や原発問題といった、イデオロギー性を帯びやすい問題をより過激な形で訴求していく戦略は、消費財においてブランドロイヤリティを獲得するために、機能の合理性よりも、やや不合理なくらいのストーリー性を訴求するという戦略と完全に一致している。

以上を踏まえると、選挙において、公約が果たしている機能は、構造的に小さくならざるを得ないことがわかるだろう。むしろ、連立協議を予想して、どのような連立政権になるようにどの政党を伸ばしたら良いかといった、選挙後のシナリオから逆算した方が合理的といえる。

※1:今回の参院選では毎日新聞社が「えらぼーと」というサービスを提供していた。憲法改正や消費増税、アベノミクスなど26の設問があり、それぞれに対して賛否と関心度を記入すると、自分の考えに近い政党や候補者がわかる。
※2:1951年の統一地方選挙で6万人超の検挙者が出たことから、1952年6月に「公明選挙連盟」が発足。同年7月には政府も「選挙の公明化運動に関する件」を閣議決定した。しかし1961年に公明政治連盟(のちの公明党)が結党されたことから、1965年に名称が変更された。

京都大学客員准教授、エンジェル投資家 瀧本哲史
東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーへ。主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事する。3年の勤務を経て投資家として独立。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』などがある。
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