「入道雲」とは何が違うのか

青空が突然暗くなって土砂降りの雷雨に見舞われたら、積乱雲のしわざです。

夏には高度15km以上にもなる積乱雲は、横方向の広がりが数km〜十数kmと狭く、寿命も30分〜1時間と短いため、積乱雲がやってくると天気が急変するのです。

積乱雲の一生を見てみましょう。

まず、低い空の暖かく湿った空気が、冷たい空気や山などに持ち上げられて、積雲が生まれます。積雲がある高さを超えると、ひとりで上昇できるようになり、モクモクした入道雲(雄大積雲)へと発達します。

髪の毛が生えて坊主頭ではなくなるため入道雲とは呼べなくなり、積乱雲と分類される
入道雲(左)に髪の毛が生えて坊主頭ではなくなると積乱雲(右)になる。(正確には多毛積乱雲。髪の毛のようなすじがない無毛積乱雲もある)。[出所=『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)]

さらに雷を伴うか、雲の頭が平らになり上部に髪の毛のようなすじの構造が見られるようになると、積乱雲と名乗れるようになります。

そのころに雲の中に生まれた下降気流が上昇気流を打ち消してしまい、積乱雲は衰弱していきます。下降気流はやがて地面に達して周囲に広がり、別の暖かく湿った空気を持ち上げて、次の積乱雲の発生へとつながります。

通常は一つの積乱雲につき数十mm程度の雨量(降水量)の雨を降らせますが、積乱雲が世代交代を繰り返したり、暖かく湿った空気が山にぶつかり続けたりすることで雨量が多くなることがあります。

天気予報などで、「雨量100mm(ミリ)」と聞いても、その雨の降り方やもたらされる影響はイメージしにくいかもしれません。

雨量とは、降ってきた雨が流れ去らずたまった場合の水の深さのこと。「1時間に100mmの雨」とは、1時間で10cmの深さの水がたまるということです。

例えば、1平方メートルの広さに10cmの水がたまった場合の重さは100kgにもなります。つまり1時間に100mmの雨は、体重100kgの小柄な力士が1平方メートルあたり1時間に1人落ちてくるのと同じなのです。実際の雨は、1平方メートルだけに降るわけではなく、もっと広範囲に降ります。

そのため、1時間という短時間のうちにこのような多量の雨が降ると、その水は一気に低地に流れ込んで道路が冠水したり、土に浸み込んで土砂災害が発生したりするおそれがあるのです。

天気の急変を知らせる“空のサイン2つ”

1時間降水量の日本歴代1位は、千葉県香取(1999年10月27日)と、長崎県長浦岳(1982年7月23日)で、共に153mmを記録しています。

また、1時間に50mm以上の「非常に激しい雨」や1時間に80mm以上の「猛烈な雨」の発生頻度は増えており、地球温暖化が原因と考えられています。

〈ここがポイント〉
気象庁では雨の強さと降り方により、雨の呼び方を使い分けて情報を発表している

天気の急変をもたらす積乱雲ですが、現在の天気予報の技術でもまだ、発生する時間や場所を正確に予測するのは難しいです。

しかし、雲や空、風の変化から天気を予測する「観天望気かんてんぼうき」を知って、天気が急変しそうなとき、気象情報とあわせて使えば、特に積乱雲による急な雷雨でずぶ濡れになることがなくなります。

くわしくは『もっとすごすぎる天気の図鑑』や『すごすぎる天気の図鑑 防災の超図鑑』で解説していますが、ここでは積乱雲の登場の前触れになる雲を挙げます。

まずは天気が急変する可能性を少し前に教えてくれる雲から。これらの雲を見かけたら、近くに積乱雲がやってきて、雷雨に見舞われる可能性があります。

【頭巾雲】
頭巾雲
積乱雲へと発達中の入道雲(雄大積雲)の上部にできる雲。[出所=『すごすぎる天気の図鑑 防災の超図鑑』(KADOKAWA)]

積乱雲になる前の雄大積雲(入道雲)の上部に、帽子のような見た目の雲「頭巾雲」が現れることがあります。雲の中の上昇気流が強いときに現れるため、入道雲は、この頭巾を突き抜けて発達し、積乱雲まで成長することがあります。

【かなとこ雲】
かなとこ雲
限界まで発達した積乱雲の上部が横に広がった雲。[出所=『すごすぎる天気の図鑑 防災の超図鑑』(KADOKAWA)]

夏には高度15km以上にもなる積乱雲。積乱雲の上部が平らになっているのは、雲が発達できる限界の高さに達しているためです。この横に広がった部分を、かなとこ雲といいます。

このほかにも、かなとこ雲が上空の風に流されて広がった「濃密巻雲のうみつけんうん」や、かなとこ雲や濃密巻雲の底にコブ状の「乳房雲ちぶさぐも」が現れることもあります。濃密巻雲の先には限界まで発達した積乱雲がある可能性があり、乳房雲は積乱雲が近づいてきているサインになることも。天気が急変する可能性があるので、気象レーダーで強い雨が降っている場所や移動方向を確認しましょう。