東日本大震災では、「災害関連死」を含めて約2万2000人が犠牲になった。甚大な被害が想定される南海トラフ巨大地震ではどうか。京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんは「最大で死者29万8000人、災害関連死は5万2000人に上ると予想される。しかも、最近の研究では三連動地震が四連動地震になるかもしれないという説が出てきている」という――。

※本稿は、鎌田浩毅『災害列島の正体 地学で解き明かす日本列島の起源』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

津波で覆われた破片や泥の中の捜索活動
写真=iStock.com/RyuSeungil
津波で覆われた破片や泥の中の捜索活動(2011年3月20日、陸前高田市)

首都圏から九州までゆさぶる「連動型地震」

じつは、南海トラフで起きる地震は大きく3つの地震に分けられる。政府の地震調査委員会は、今後30年以内で大地震が起きる確率を、各地の地震ごとに予測している。

それによると、今世紀の半ばまでに太平洋岸の海域で、東海地震、東南海地震、南海地震という3つの巨大地震が発生する予測を伝えている。

東海地震とは東海地方から首都圏までを襲う地震であり、東南海地震と南海地震は中部から近隣・四国にかけての広大な地域に被害を及ぼす地震である。

これら3つそれぞれの巨大地震が、これから30年以内に発生する確率として示されているのは、「M8.0の東海地震」が88%「M8.1の東南海地震」が70%、「M8.4の南海地震」が60%である。いずれも高い予測が示されているのだが、これらの数字は毎年更新され、少しずつ上昇している。現在では、M9クラスの巨大地震が30年以内に発生する確率は80%だ。

注目すべきは、東海・東南海・南海の3つで地震が同時発生する「連動型地震」のシナリオが描かれていることだ。その場合、震源域が極めて広く、首都圏から九州までの広域に甚大な被害を与えると想定されている。しかも、この広域で地震が起きるのは確実と言われているのである。

必ず来ることがわかっている以上、国も国民もただちに被害対策に乗り出さなければならないときを迎えている。

次の南海地震が起きるのは2038年?

過去の活動期の地震の起こり方のパターンを統計学的に求め、それを最近の地震活動のデータに当てはめてみると、次に来る南海トラフ巨大地震の時期が予測できる。

複数のデータを用いて求められた次の発生時期は、西暦2030年代と予測される。これは前回の南海地震からの休止期間を考えても妥当な時期だ。前回の活動は1946年であり、前々回の1854年から92年後に発生した。したがって、地震活動の統計モデルから予測できる次の南海地震は、2038年頃ということになる。

これまで繰り返し起きた南海地震の間隔は単純平均で約110年なので、それに比べて92年はやや短い。とはいえ、どんなに遅くとも2050年までには次の巨大地震が確実に日本を襲うだろうと地震学者は考えている。