年収1500万円でも貯金がぜんぜん貯まらない人たち
――ちきりんさんがこの本で提案されていることはどれも非常に具体的なのですが、なかでも「支出マネジメント」のところはとくに参考になります。みんなが心配している年金制度がこの先どうなるかはわかりませんが、支出をコントロールするというのは個人の心がけしだいでできることですよね。
【ちきりん】国が貧しくなるという感覚を持つのは難しいんです。人口増と経済成長が続けば社会保障もどんどん充実させられるけど、基本トレンドが変わったのに、今までと同じように福祉を充実させ続けることはできない。年金含め、社会福祉も既得権益化するんです。「以前は貰えたものが、貰えなくなるなんておかしい!」という話になる。人口増と経済成長が止まれば、福祉レベルだって後退して当たり前。多額の資産がある人にまで年金を払う必要があるのか、よく考えるべきです。
――そうですね。
【ちきりん】支出をコントロールしないと、収入が多くても人生のコントロールができない。リーマンショック前、景気がすごくよかった外資系金融業界でも、早期引退した人なんてほとんどいないでしょう。勤め人で年収5000万円だと、上位0.1%内の年収ですよね。でも支出もどんどん膨らむ。開業医や弁護士など自営業の場合も、税金を払うくらいなら事務所を拡張しようという話になって、こちらも支出コントロールができない。そうなると、収入が多い人でも早期引退なんて不可能です。
――どういう人だったら可能なんでしょう。
【ちきりん】本当に欲しいもの以外は買わない人たちです。車や家についても、もしくは子供やその教育費についても、「隣の家がやってるからうちも」とは考えない人です。それをやってると、どれだけ働いてもお金は足りない。
――そうやって引退できない人たちって増えているんでしょうか。
【ちきりん】切羽詰まった人から順に、支出のコントロールを始めます。いまだと年収600万円くらいの人は消費を絞り始めていますよね。でも800万円以上の人は、給与がどんどん上がっていた時代の夢をまだ見ている。