「リスキー」と「怖い」は違う

――今回のご著書では「ふたつの人生を生きる」ことを提案されています。これから40代になる人たちにとって「このまま歩き続けるのは、あまりにリスキー」と書かれていますが、どちらかというと何かを「変える」ほうがリスキーと思いがちですよね。会社に残るよりも出るほうがリスキー。日本にいるよりも海外にいくほうがリスキー。

【ちきりん】やったことがないと、何でも怖いですよね。自転車に乗るのも初めてのときは怖いでしょう? 転職も同じで、身近に経験者がいないと怖いのはよくわかります。

――「保守的な業界の安定企業に勤める、年収が高く貯金のある人ほど、解雇や失業、転職を怖がっているように見えます」とも書いておられます。そういう組織で勤め上げた親や転職したことがない上司が「組織を離れたらものすごく大変な目に遭うぞ」「外は怖い、すごく怖い」と煽ると。

【ちきりん】転職経験のない人ほど、人を脅かすんですよね(笑)。これから40代になる人の親は高度成長期に働いていて、1つの会社にい続けることが合理的だった世代ですから。

――ひとつの会社にずっといることが合理的であり、可能でもあったのは長い歴史のなかでみれば一瞬ですよね。

【ちきりん】そうなんです。ただ最近は、業界によって常識も大きく変わってきています。サービス業やウェブ系の仕事では、転職なんて珍しくもない。ベンチャー企業や外資系企業もそうです。その一方、いまだに転職や中途採用が珍しい会社や業界もあります。

――そういう人たちに「怖くないからやってみたら」といっても効果ないですね。

【ちきりん】見知らぬものが怖いのは自然な感情ですから、説得しても変わらないでしょう。ただ実例が身近にいなくても、ネットの中でそういう人の例を目にする機会は増えると思うんです。私も、本やブログでそういった例を伝えていくことで、徐々に「あ、そうなのね」と思ってもらえたらいいなと。