ちきりんさんの「考えよう」シリーズ最新刊は、『未来の働き方を考えよう』。昨年発売された『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著)を読んで「未来の働き方についてじっくり考えてみたい」と思ったことが本書を書いたきっかけだったといいます。

『ワーク・シフト』は、グローバルな文脈で、2025年、働き方はどうなっているのかを予測した本ですが、ちきりんさんの『未来の働き方を考えよう』では、より日本の現状に引き寄せた議論をベースに、「40代で働き方を選びなおし、ふたつの人生を生きる」という具体的で大胆な提案がなされています。

40代で新たに職業を選び直すなんて「ごく限られた人の話」と思っているのでしょうか? 想像力を働かせたらそういう結論にはならないはず、とちきりんさんは言います。彼女がこの本で伝えたかった「いちばん大切なこと」とは?

「ノマド」という言葉にはまったく興味がない

ちきりんさん
――今回のご本のなかで、『ワーク・シフト』を「働き方ブームを象徴する本」として紹介していただきましたが、まさにこのところ「働き方」に関する本が続々と出ています。どういう場所でどういうふうに働きたいのか、仕事に何を求めるのか、というテーマがいたるところで議論されるようになりました。その絡みでよく聞かれる言葉に、「ブラック企業」や「ノマド」があります。10年、20年前にはなかった使われ方です。なぜ多くの人がこの2つの言葉に反応するんでしょう。

【ちきりん】私自身はどちらもほとんど使わないです。特にノマドのほうは、ネット以外で見聞きしたことは一度もないので、そういう言葉を使っている人が一般社会にいるのかどうかもよくわかりません。

――「ノマド」という言葉にはたして実体があるのかということですね。

【ちきりん】そうですね。「ブラック企業」のほうは、ファストフードチェーンの店長が管理職だからという理由で残業代が支払われていなかったり、大企業でも長時間労働による過労死の労災裁判があったりと、以前から過重労働の問題が起きていて、就活をする人がそういう企業を見分けたいという気持ちからラベル貼りを始めたんだと思います。