“苦いビール”として4月に発売された「アサヒ ザ・ビタリスト」が異例の快進撃を続けている。4カ月で130万箱を突破、年間販売目標も280万箱に上方修正した。近年は“飲みやすさ”が主流となる中で、なぜ“苦み”で勝負したのか。開発を担当したアサヒビールの山田佑ブランドマネージャーに、経済ジャーナリストの高井尚之さんが取材した――。
販売好調な「アサヒ ザ・ビタリスト」
撮影=プレジデントオンライン編集部
販売好調な「アサヒ ザ・ビタリスト」

アサヒの“苦いビール”がヒットしている

梅雨明け後の7月から猛暑が続く9月はビール系が最も売れる時季だ。2026年10月からの酒税法改正(※)もあり、大手各社は特に「ビール」の新商品開発に力を注ぐ。

(※)これまで3種類に分かれていた「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(第3のビール)」の税額が段階的に変更されて2026年10月に統一される。たとえば一般的な缶ビール(350ml)では税額54.25円になる予定。

そんな中、好調な商品がアサヒビールの「アサヒ ザ・ビタリスト」(以下、ビタリスト)だ。今年4月15日に発売された新商品で、6月11日の公式リリースでは「年間販売目標200万箱の5割となる100万箱を突破」と発表した。さらに8月4日には「130万箱を突破」「年間販売目標は280万箱」に上方修正した。

ちなみにビール系の情報と向き合うと、資料によって「箱」と「ケース」があるが、アサヒによると「箱とケースは同じです。1箱(1ケース)は大瓶633ml×20本の換算となります。昔は瓶が主流だったのが背景です」とのこと。

「ビタリスト」はどんなねらいで発売したのか。ブランドマネージャーに聞いた。

お酒は「飲みやすさ」が主流

「『アサヒ ザ・ビタリスト』は、爽快な苦みとスッキリした後味が特徴です。商品名『BITTER-IST』は“苦い”+“~する人”を組み合わせた造語で、『苦みを愛する大人たち』という意味も込めています」

ブランドマネージャーの山田佑さん(マーケティング本部 新ブランド開発部 担当課長)
撮影=プレジデントオンライン編集部
ブランドマネージャーの山田佑さん(マーケティング本部 新ブランド開発部 担当課長)

ブランドマネージャーの山田佑やまだ・たすくさん(マーケティング本部 新ブランド開発部 担当課長)はこう話す(以下、発言は同氏)。

近年のビールの嗜好トレンドは「飲みやすさ」や「すっきり」が中心だ。競合の新商品も、たとえば「キリンビール 晴れ風」(2024年4月2日発売)は「うまみがありながらも、飲みやすくきれいな味わい」を掲げてヒットした。

「飲みやすさ」はビールに限らず、長年続く傾向だ。たとえばサントリーが2008年頃から仕掛けて大ヒットした「ハイボール」(ウイスキーのソーダ割)はアルコール分8%で訴求した。当時同社を取材したが、それまでウイスキーの黄金比率は同12%だった。

現在、市場に出回る「チューハイ」や「カクテル」も飲みやすい味が多い。よく「若者の酒離れ」が指摘されるが、若者だけでなく全世代で酒離れ(アルコール消費量減)が続き、飲む場合もライト感覚で楽しむ人が増えた。