台風19号の影響で車両が浸水被害を受けた北陸新幹線は25日、東京―金沢間で直通運転を再開した。鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏は「車両を事前に避難させた例は過去にもある。運転に欠かせない作業車を守るために、基地の浸水対策も必要だ」と指摘する――。
写真=時事通信フォト
台風19号の大雨で千曲川が氾濫し、水につかった北陸新幹線の車両=2019年10月13日、長野市

水につかった10編成は廃車となる可能性

台風19号が東日本を蹂躙じゅうりんしたあの日、深夜4時ごろまで荒川の水位をチェックしながらソファでうとうとしていた筆者は、朝7時のNHKニュースに映し出された、新幹線車両が並んで水没する映像に衝撃を受けて飛び起きた。

12日夜、伊豆半島に上陸した大型で非常に強い台風19号は、関東甲信越、東北地方の広い範囲に記録的な豪雨をもたらした。これまで長野県は台風被害が比較的少ないことで知られていたが、千曲川の各所で堤防越水による氾濫が発生、長野市穂保ほやす地先では約70mにわたって堤防が決壊し、北陸新幹線「長野新幹線車両センター」のある長野市赤沼は濁流にのみ込まれた。

水没したのは北陸新幹線用に製造された最新車両のJR東日本E7系車両と、JR西日本W7系車両(仕様は同一)で、留置線に停車していた7編成と、検査庫で点検中だった3編成の合計10編成(120両)の全てが、車内の座席まで浸水する被害を受けた。

新幹線車両は走行や車内サービスに必要な機器の多くを床下に搭載している。これらは電子機器の塊であり、泥水につかった機器は全滅で再利用は不可能だ。また水没した自動車はいくら洗っても臭いがとれないと言われるように、浸水した座席をはじめとする車内設備も全て交換が必要になるが、これらの大規模な工事を現地で行うことは困難であるため、10編成は廃車となり、代替の新車を製造することになるとの見方が有力だ。