小さく見せるのは大きく見せるよりも難しい。カップ上部の特殊なシートでボリュームを抑える。さらに、カップ下部のワイヤの開きを大きくすることでバストトップの位置を低くし、ボリュームを全体に分散するように工夫されている。

独自の姿勢を貫くとはいえ、行く先に迷うことがある。そんなとき、上家さんが必ず訪れる場所がある。本社にあるミュージアム「ワコール ミュージアム オブ ビューティ」だ。木綿地で作られた第1号のブラから最新作まで、ワコールと下着の歴史が整然と並ぶ。

「順番に見ていくと、なかには時代にそぐわないようなハイテク技術を使った商品もあるんです。東京オリンピックが開催された時代に、縫い目のない『シームレスブラ』が発売されているんですよ。そういうものを見ると、ある種ものづくりに携わる人間のエゴを感じて、自分ももっと柔軟に新しいものを生み出していかなくては、と背中を押されたような気持ちになります」

逆に、ワコール製品のファンだというお客様から送られた手紙と、大切に使われた古い下着の展示を見ると、「ワコールを愛してくださるお客様の目線を一番大事にしなくては」と痛感させられるという。上家さんにとってこのミュージアムは、商品開発にとってもっとも大切な2つのことを思い起こさせてくれる場所なのだ。

小田さんは、商品開発という仕事についてこう語る。

「『何か新しいことをしたい』というのは、常に上家とも言い合っていること。僕らがつくっているのは下着ですが、ゴールはそこじゃない。下着を通してお客様に何を提供できるか、生活にどんな変化を与えられるか、考え続けることが大切なんだと思います」

(森本真哉=撮影)
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