なぜ「下着屋」だと思ってはいけないのか
苦労が実り、ネット限定で売り出された最初の「小さく見せるブラ」は当初の販売計画数量2000枚を超える注文があり、わずか5日で完売。これは異常なヒットといってもいいだろう。今までにない商品に興味を持ったマスコミから、取材依頼も相次いだ。
主力商品とは逆のアイデアに目をつけ、ヒット商品を生み出した上家さん、小田さんは、ともに大学の理系学部出身。文系学部出身のメンバーが多いブランド事業本部においては、非常に珍しい存在だ。そんな2人には、共通した独特の姿勢がある。それは、「自分たちを下着屋だと思わない」こと。
「下着って、胸を寄せたり上げたり、アパレルのなかではかなりメカニカルな要素が強いと思うんです。それを忘れないためにも、あえて自分のことをアパレルの人間だと思わないようにしています。『ブラはこの形』と決めつけたら、あとはデザイン性に頼るしかない。それではあまりにアイデアに膨らみがありませんから」
みんながいいと言うものはまず疑う
そう語る上家さんは、「既成概念は新しいアイデアの邪魔になることも多い」と、市場調査をするときも服や下着より重視するものがある。一見畑違いの、自動車メーカーの展示会に行って、スプリングなどの部品を見るのだという。
「その部品たちがすぐブラに使われることはないけれど、どうにかして使えないか、考えるチャンスを与えてくれる。アイデアを膨らませる貴重な材料になるんです」
一方、小田さんは、他人の意見との距離感について持論がある。
「天邪鬼なようですが、みんながいいと言うものは、まず疑うようにしています。あえて悪い部分を探すこともある(笑)。他人の意見とは距離を保ちたいんですよ」
他人から何かアドバイスされても、言われたとおりに直すようなことはしない。商品を生み出す側の人間ならば、そこから気づきを得て、自分流にアレンジできなくてはいけないという考えからだ。
「誰かの意見をそのまま反映するだけなら、僕じゃなくてもいいじゃないですか」