「絶対的なニーズが少ない『小さく見せるブラ』は、主力商品にはなりえません。ですが、ニッチだからこそ少人数で動くことができるし、アイデアをストレートに表現できる。そう思ったら、俄然やる気が湧きました」

どんな商品も、関わる人が増えれば増えるほど、根幹となるアイデアの尖った部分がなくなっていく。そうすることで多くの人に愛される商品が生み出される一方、いい意味で違和感を抱かせるような、実験的な商品は生まれにくくなる。「小さく見せるブラ」のようなアイデアの、尖った部分を維持したまま商品化するには、少人数かつ短期間で企画を詰めていくほうがいいのかもしれない。実際、「小さく見せるブラ」の商品化に携わったのは、上家さん、小田さんのほか数人。通常1年以上かかるという開発期間も、わずか半年に収めて販売まで漕ぎ着けた。

とはいえ、一風変わった商品であることには違いない。よさを最大限伝えるために、普段とは違う苦労もあったという。まず2人が悩んだのは、ネーミング。

「クリエーターに依頼したら、名前として響きのいい商品名の候補がいくつかあがってきたんです。でも、主力商品と比べれば広告費もあまりないなか、胸を小さく見せたい人に伝わりやすい商品名でなければ、商品の存在を知ってもらうことすらできません。思い切ってやめました」(小田さん)

ネットを活用し、胸を小さく見せたい人がリアルに語るワードを検索。結果、商品名では悩みをストレートに表現することになった。また、「小さく見せるブラ」を着用するメリットをビジュアルで伝えるため、どんなシーンで胸を小さく見せたいのかを徹底的にリサーチ。胸の部分がきつい、いわゆる「ムリめのシャツ」のボタンもしっかり閉じてスッキリ着られる、というビジュアルを売りに、商品の販売が始まった。