塾業界の競争が激しくなっている

実際に塾の経営者の人に話を聞くと、「最近は、お父さんお母さんではなく、おじいちゃんおばあちゃんがお金を出して塾に行く人が多い」そうです。家庭によっては子供の教育費の出どころが「親だけではなく、祖父母も」という家庭も少なくありませんから、少子化だから塾が苦境になりがち、という論は間違っているのではないかと考えます。

それでも、現実的には学習塾を運営する会社の倒産は増えています。東京商工リサーチによれば、2024年の大学受験予備校を含む「学習塾」の倒産件数は53件(速報値)と、2000年以降で過去最多を更新したとのことです(*5)

*5 東京商工リサーチ「2024年の『学習塾』倒産 件数、負債が過去最多 少子化と競争が激化、淘汰の時代に」2025年1月6日

これは、塾という業種が比較的、参入障壁が低いからだと考えられます。また、最近は実店舗がある塾ではなくオンラインの塾も増えてきています。家の中にいながら、オンラインで授業を受けることができるサービスもかなり多くなってきているのです。店舗がなくても塾が経営できてしまうので、参入しやすい一面があるわけです。だからこそ、塾業界は競合企業も多いレッドオーシャンになっているのではないかとも考えられます。

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見るべきポイントは「質問対応」

前提の話が長くなりましたが、競合が多数いる厳しい状況の中でもしっかり経営ができていて、多くの顧客からの満足度も高い塾というのは、あるポイントを見れば一発でわかります。それは、「お金にならないところで、どれだけしっかりサービスをしてくれるのか」ということです。

例えば学習塾では、授業が終わった後に、先生が生徒への質問対応をしてくれる場合があります。集団授業など、先生1人に対して生徒の人数が多い授業を行っている塾では、質問対応の時間を設けて、先生が質問を受け付けていることがあります。また、チューターと呼ばれる大学生のアルバイトが質問を受け付ける、ということもあります。オンラインの塾では「24時間質問受け付けます!」という文言で売っているところもあります。

とはいえ、ほとんどの塾でこれらのサービスは、サブスクリプション的に行われています。その塾に入会さえすれば、または一定の金額を払えば、「質問したい子はいくらでも質問してOK」「質問しない子は、帰ってもOK」という仕組みになっています。

どんなに質問をたくさんしても、先生が嫌な顔を一つもせずに対応してくれる塾であれば、安心です。逆に言えば、この質問対応のクオリティが低かったり、先生が嫌な顔をする先生だったりすると、良くない塾かもしれないと考えられます。なぜなら、経営的な観点で言えば、これらの質問対応は、「少なければ少ないほど儲かる」という仕組みだからです。