首都圏を中心に中学受験がヒートアップし、入塾する年齢が早まる現象が起きている。コロナ禍で小学校低学年をとりまく環境にどんな変化があったのか。東京の吉祥寺・杉並を中心に難関校の中学受験進学塾VAMOSを経営する富永雄輔さんは「周りの親が入れているからと焦ってわが子を強引に入塾させたり、自宅で親が勉強管理したりすると勉強嫌いになってしまう」と警鐘を鳴らす――。
小学生
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コロナ禍で、わが子を低学年から無理やり入塾させたがる親が増加

「昨年度のコロナ禍では、休校中に私立校の多くが素早くオンライン授業に切り替えたことが話題になりました。こうした私学の対応の早さが注目されたこともあり、中学受験はますます盛んになっています。さらには、最難関私立中学への進学実績が高いことで知られるサピックスでは、今年度、小学1年生、2年生の入塾募集を締め切った教室が続出しているそうです。サピまでいかなくても、就学前から公文式教室に通い始めるご家庭も増えています」(富永さん、以下同)

従来であれば、中学受験対策の塾には、早くても小学3年~4年生から入るのが通例だった。それがなぜ、1~2年前倒しにするようになったのか。背景には、昨年度のコロナ禍で休校期間に生じた“学力格差”があるという。

のんきに構えていた親子の心にもさざ波が立つ

「この失われた3カ月はわれわれ教育関係者にとっても深刻な問題です。小学校の中には、通常通りカリキュラムを進められず、本来3カ月かけてじっくり取り組むところを1カ月で駆け足的に進めたり、中にはすべてカバーすることを諦めて一部飛ばしたまま進めたりする小学校もあります。

すると当然ながら、本来なら学校でこなすべき基礎学力がごっそり抜け落ちたままの子が出てきます。一方で、入塾していた子はオンライン授業などを受けてしっかりと基礎学力をつけてきた。こうして、学力格差が開いていきました」

そうなると、焦るのは保護者である。新2年生は学力格差を埋めようとして、新1年生は同じ轍を踏まぬよう、わが子を進学塾・学習塾に入れる。こうして低学年や未就学のうちから塾に通う子が周囲に増えれば、のんきに構えていた親子も少なからず心にさざ波が立つ。そして親子で塾の体験教室に行こうものなら、そこで学習を進めている同学年の子たちの存在を知りさらに焦る――こうした焦りのスパイラルが、一部の教育過熱地域では起きているのだという。

そんな現状に対し、富永さんは、低学年から塾で学ぶこと自体は悪くはないが、「焦りからくる安易な入塾は考え物」と指摘する。