「アメリカを再び偉大に」する起業家たち

新設される政府効率化省のトップに選ばれた宇宙開発企業「スペースX」や電気自動車メーカー「テスラ」の創業者イーロン・マスク氏と投資家のヴィヴェク・ラマスワミ氏は、連邦政府の規模を縮小し、規制を緩和する方向で動いていくと見られる。この取り組みは、アメリカ経済を活性化し、革新を促進する可能性を秘めている。

「規制の少なさがアメリカのイノベーションを生む土壌となってきた」と考える人は多い。また、移民一世(マスク氏)や移民二世(ラマスワミ氏)として成功を収めた2人の起用は、アメリカの移民や起業家に対する包容力を象徴し、世界中から優秀な人材を引き寄せるメッセージともなる。

アメリカは今後、愛国心、上昇志向、革新、そして、努力と勤勉が成功の基盤となるポスト・アイデンティティ社会に変化し(ジェンダーやアイデンティティではなく)、新たな移民を吸引していく、より一層強い国になっていく可能性がある。

トランプ2.0政権は、外交、経済、社会の各分野で新たな展開を見せると推測される。

日本にとっては、対中国戦略の中で日米同盟が果たす役割がますます重要になる。台湾や南シナ海の安定に向けた取り組みにおいて、日本のリーダーシップが発揮されればアメリカとのパートナーシップを深められる機会となるだろう。

【取材協力】(登場順)
長尾賢博士
現在、ハドソン研究所研究員。学習院大学で学士、修士、博士取得。博士論文「インドの軍事戦略」をミネルヴァ書房より出版した。自衛隊、外務省での勤務経験がある。学習院大学、青山学院大学、駒澤大学で教鞭をとる傍ら、海洋政策研究財団、米・戦略国際問題研究所(CSIS)、東京財団で研究員を務め、2017年12月より現職。他に13の肩書を有し、平和安全保障研究所研究委員でもある。英語論文150、海外メディアでのコメントは800以上。

スティーブン・ナギ博士
国際基督教大学教養学部政治学科の教授。日本国際問題研究所(JIIA)客員研究者。近著に『Middle Power Cyber Security Cooperation in the Indo-Pacific: An Analysis Through the Lens of Neo-Middle Power Diplomacy』、『Indo-Pacific Connector? Japan’s Role in Bridging ASEAN and the Quad』(The Journal of East Asian Affairs. Institute for National Security Strategies (Vol. 37., Issue 1)などがある。

佐藤洋一郎博士
立命館アジア太平洋大学(APU)教授。多数の学術書や論文を発表。BBC、アルジャジーラ、朝日新聞、日経アジアレビューなど、世界中のメディアに登場している。米国国防総省アジア太平洋安全保障研究センターで8年以上教鞭をとり、ユソフ・イサハク東南アジア研究所の客員上級研究員も務めた。慶應義塾大学法学部卒業、サウスカロライナ大学国際学修士、ハワイ大学政治学博士。近著に『Alliances in Asia and Europe: The Evolving Indo-Pacific Strategic Context and Inter-Regional Alignments』(Routledge、2023年)、『Handbook of Indo-Pacific Studies (Indo-Pacific in Context)』(Routledge India、2023年)などがある。

アスタ・チャダ博士
立命館大学(京都)の国際関係学准教授。立命館アジア太平洋大学の招聘講師も務める。 また、国際研究学会(ISA)の宗教とIR部門(REL)のコミュニケーション・オフィサー、民主化推進センターの研究員、ハワイ太平洋フォーラムの女性平和安全保障(WPS)フェローでもある。 インドと日本の関係、南アジアの安全保障、インド太平洋問題、世界政治における宗教について執筆している。著書に『Faith and Politics in South Asia』(Routledge、2024年)がある。

バーバラ・クラティウク博士
ポーランド・ヴィスワ大学助教授。インド、日本、韓国の大学で客員研究員。ワルシャワ大学、フライブルクのアルベルト・ルートヴィヒ大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学び、ベルリンとシンガポールのポーランド大使館やさまざまなメディアでの勤務経験を経て植民地主義、権力、アジアと米国および欧州の複雑な関係について執筆する。ポーランドのメディアでの東アジアの政治情勢についてコメントも多数あり、ポーランドおよびEUにおける東アジアおよび東南アジアへの理解を深める活動も行っている。編著に『Handbook of Indo-Pacific Studies(Indo-Pacific in Context)』(Routledge India、2023年)があり、現在同著のUSとベトナム関係について執筆中。

関連記事
【前編】トランプ2.0の人事からわかる「米中戦略的対立」の本気度…識者が危惧する日本企業が被るチャイナリスク
「プーチンからの月給31万円」は金正恩の懐に…ウクライナの戦場に駆り出された"北朝鮮の兵士たち"の末路
トランプ氏にあんなことができるのは安倍首相だけだった…外務次官が思わず「ダメです」と止めた"仰天の一言"
「習近平の共産党」を守るためなら手段を選ばない…"西側諸国"で次々と明らかになった"中国スパイ"の実態
だから中国は尖閣諸島に手を出せない…海上保安庁が「領海警備」「海難救助」以外にやっている知られざる仕事