良い習慣は才能を超える

私が繰り返し、良い習慣の大切さを説くのは、それが結局は自分のためになるからです。人間は自分を磨くために働いているのです。そう考えたら、日々の努力や難しい局面にチャレンジしていく、前向きな姿勢を保つことも大切です。すると、それが習慣化し、やりがいのある仕事にも恵まれていくでしょう。

私が「出世したほうがいい」とよく主張するのは、40歳前後で管理職になると、明らかに周りの“景色”が違って見えるからです。部長になればまた違った見え方をするでしょう。「社長は孤独だ」などといいますが、会社で一番やりがいを感じているのは社長です。そこを勘違いしてはいけません。

ただし、それなりの立場・役職に就いたら、部下に仕事を任せましょう。40代にもなって、プレイングマネジャーを自負している管理職がいますが、そんなものは愚の骨頂です。デキル部下がいるのに仕事を任せないのは、彼らの成長の芽を摘んでいることにほかなりません。

では自分自身は何をするかというと、大所高所の視点に立った戦略・戦術の立案です。課長なら、課のリーダーとして、与えられた目標を達成するために、人員配置と役割の徹底、各自の行動計画を考えてください。

そのためには部下との信頼関係構築も重要です。会社の仕事はチームで進めるものなので、情報はできるだけ共有化し、業務の効率化につなげていくべきでしょう。課内のコミュニケーションが円滑だと、課長が間違いそうになると、部下が注意してくれますし、悪い情報もいち早く伝わってきます。

私はいつも「良い習慣は才能を超える」と話しています。良い習慣を持つと、人は確実に成長していきます。ぜひそうなって、ビジネスマン人生で幸せを掴んでください。しかし、それには強い決意と覚悟が要ります。しかもそれは根本の部分に存在しているものですから、習慣以上に大切といっていいでしょう。

東レ経営研究所 特別顧問 佐々木常夫
1944年、秋田市生まれ。69年東京大学経済学部卒業後、東レに入社。2001年に同期トップで取締役に就任。03年、東レ経営研究所社長に就任し、10年から現職を務める。著書に『そうか、君は課長になったのか』など。
(構成=岡村繁雄 撮影=小倉和徳)
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