1週間で自分を生き返らせる方法
「ツレがうつになりまして」というテレビドラマがあった。旦那がうつになった若夫婦の生活をコメディタッチで描いたものだった。うつはいまやホームドラマに登場するほど、普通の社会現象になっている。雇用不安、人減らしによる過重労働、成果主義による職場の締め付けなどが背景にあると思われるが、そのためにうつになった人にとってはコメディどころではない。
アメリカの心理学者セリグマン博士(ペンシルバニア大学教授、前アメリカ心理学会会長)は、うつの改善に役立ち、しかも驚くほど簡単なプログラムを提唱している。それはthree good thingsといわれるもので「まいにち、就寝前に、その日にあった『よいこと』を3つ書き出し、これを一週間続ける」というものである。この簡単な方法がうつの改善に驚異的な効果を発揮するのである。
図1は、このプログラムの効果を調べるために、セリグマン博士が、約60人の実験参加者に、プログラム実施前後に行った「うつ症候」テストと「幸福感」テストの結果である。驚くべきことには、たった一週間で、うつスコアが約14(プレテスト)から10(ポストテスト)に激減し、それが6カ月後まで続いている。また幸福度スコアは、56(プレテスト)から57(ポストテスト)へ、さらに58、59へと日を追って確実に増え続けている。これらの結果は、一週間のこのプログラムが、参加者にとってきわめて大きなインパクトがあったことを示している。
NHKの生活科学番組「ためしてガッテン」では、家庭介護者(主として主婦)のストレス緩和に役立つ、簡単なプログラムを紹介している。ハッピーノートと呼ばれるこのプログラムは介護者に、介護中に感じた嬉しかったことを、どんな小さなものでも日記帳(ハッピーノート)に書きとめることを一週間続けてもらう、というものである。
図2は、実験に参加した10人の介護者のプログラム開始直前(日記記入前)と終了直後(記入後)の気分をくらべたものである。記入前の6角形(青)にくらべて記入後の6角形(赤)はかなり縮小しており、ストレスが緩和されていることがわかるが、とくに不安、落ち込み、怒り疲労が減っている。
3つのよいことを書いたり、嬉しかったことを書くだけで、人間がこんなに変わるということが本当にありうるのだろうか。
部分と全体の間には面白い関係がある。それは、部分が変わると全体が一変することがある、ということだ。