iPhoneと同じように“余白”がある

携帯電話を例にしてみましょう。iPhoneは、初めて登場したときは不具合も多く、完璧といえる製品ではありませんでした。しかし、それを改修してバージョンアップを続けていくことで完成度が高まっていき、現在も多くの人に使われています。

一方、日本の企業が開発した、いわゆる「ガラケー」がなぜ、iPhoneにシェアを奪われたのかといえば、発売した時点で100パーセントの完成度を目指したからではないでしょうか。たしかに完成度は高かったけれども、それ以上に発展させる余地がなかったわけです。

F-15の優れている点は、iPhoneと共通しているところがあります。それは“余白”があるということ。

エンジンや燃料や電子機器が詰めこまれたボディには、改修を行なったり、新たな設備を搭載するためのスペースが常に1~2割あるのです。ボディに改修の余地を残しており、設備も後付けが可能だったからこそ、長い歴史のなかで進化を遂げることができたのです。

非常に優れたボディの基本設計

もう1つの優れたポイントが、ボディの設計です。F-15は、スピード性能(加速、減速)、旋回性能(旋回率、高速旋回、低速旋回)、耐G性能(最大9Gの衝撃に耐えつつ、故障が少ない)、乗り心地の良さ(コックピットの広さ、通常運行時の安定具合)などにおいて、戦闘機としての基本設計が非常に優れています。だからこそ、“中身”だけを変えることで改修を重ねながら、登場から50年以上経った今でも第一線で活躍できるのです。

F-15は戦闘機としては「第4世代」と呼ばれます。現在、戦闘機は「第5世代」へと移り、各国ではすでに「第6世代」の開発が進められています。

しかし、技術が進化を続けるなかで、最新鋭もいつかは最新鋭ではなくなります。たとえば、第5世代の特徴であるステルス性能は、レーダー波を反射しない技術によって実現していますが、研究が進めば、いずれはステルス機も捕捉できるレーダーが開発されるでしょう。そうなれば、ステルスはもうステルスではなくなり、さらに高性能の戦闘機が開発されるはずです。まさにイタチごっこです。

そんななかで、F-15はいまだにつくり続けられています。この事実は、アメリカが、運用実績があり、かつコストパフォーマンスのよいF-15の時代がまた来るであろうと考えていることの証左しょうさだといえるのではないでしょうか。

F-15は双発の強力なエンジンを備え、世界でもトップクラスの実力を誇る(出所=『元イーグルドライバーが語る F-15戦闘機 操縦席のリアル』)

それだけ、F-15は優れた戦闘機であるといわざるを得ないのです。