GAFAMが忘れたい「黒歴史プロダクト」
新しい巨人たちが、先人たちよりもその地位に安住できると信じるべき理由もない。代替物よりも優れた、安くておもしろい製品やサービスを提供し続ける限り、利用者は獲得できる――だが利用者は無料の新サービスを得られるが、それを提供する企業のほうは、そのための費用を全額自分で負担するしかないのだ。
ときには、彼らが何をやっても成功する、お金を刷るに等しい会社だと思ってしまうが、それは今日の彼らのトップセラーしか見ていないからだ。
だがみなさんはアマゾンのファイアフォンやグーグルグラスやマイクロソフトのZuneミュージックプレーヤーをご記憶だろうか? GAFAMの発表する製品の多くは鳴かず飛ばずだった。というのも、それが提供したものはつまらないか、すでにあるか、ややこしすぎるか、醜すぎるか、高価すぎるか、ひたすらお寒い代物だったりしたからだ。
マイクロソフトは、音楽サービスのグルーヴミュージック、スピーカーのインヴォーク、フィットネスブレスレットのマイクロソフトバンドやiPadクローンのサーフェスRTでまったく成功しなかった。「ビングる」は「ググる」ほどは一般化していない。
マイクロソフトの携帯電話キンは大失敗で、代わりに出てきたウィンドウズフォンもダメだった。失地回復のため、マイクロソフトはノキアの携帯電話部門を2013年に買収した。だがマイクロソフトの携帯電話は復活しなかった。ノキアの携帯電話が潰れただけだった。
1カ月で99セントに値下げした携帯電話アプリ
フェイスブックはおそらく、2013年にフェイスブック・ホームという独自アプリでモバイル市場に参入しようとしたのを忘れたいと思っているはずだ。これは特別な携帯電話アプリだったのだが、1カ月で値段を99ドルから99セントに引き下げねばならなかった。
おそらく同社は、検索エンジンのグラフサーチ、写真共有アプリのフェイスブックポークやその後継スリングショットもなかったことにしたいだろうし、さらにフェイスブッククレジット、フェイスブックディール、フェイスブックオファーも忘れたいだろうし、フェイスブック通貨のリブラについても同様だ。
アマゾンもまた、市場に受け入れられずに投げ捨てるしかなかったプロジェクトを大量に擁している。たとえば独自のファイアフォン、写真サービスのスパーク、ゲームのクルーシブル、アマゾンウォレット、ファッションや赤ん坊製品を販売していた子会社、さらにオークションサイト、食品配達、チケット販売、旅行代理店、ポップアップ店舗などがあった。