「絶好調のスリコ」のきっかけは2019年
商業施設の中にある、3COINSの店舗を訪ねてみた。店内は広々としていて、幅広い年代の女性やファミリー、そして少数の男性が思い思いに商品を手に取っていた。
ふと、10年ほど前の3COINSを思い返してみる。当時の店内は人がすれ違うのがやっとの広さで、明るいピンク色や水玉模様など、いかにも若い女性が好みそうな色やデザインのものが多かったと記憶している。
それがいまや全体的に落ち着いた色合いとなり、一般的にビビッドな色が使われがちなベビー・キッズ向けの商品すら、いわゆる“くすみカラー”をまとった落ち着いたテイストとなっている。
この変化は、2019年にターゲットをガラリと変えたことによるものだ。3COINSは1994年、大阪梅田・茶屋町に1号店をオープン。当初は外部から仕入れた雑貨を売っており、店舗数を拡大していくに従って自社独自の商品を展開するようになっていった。
このとき、明確にターゲットを定めていたわけではなかった。3COINSを運営するパルでディレクターを務める肥後俊樹さんは次のように語る。
データで浮き彫りになった本当の顧客
「昔は一般的に、『雑貨は若い女の子たちが好きなもの』という風潮がありました。その風潮に私たち自身も無意識のうちに乗っかってしまい、いつの間にか『ピンク色やポップな商品が3COINSらしいよね』と、自分たちで決めつけてしまうようになっていたのです」
しかし2019年ごろ、それまで順調に推移してきた売り上げの伸びが鈍化する。その原因として肥後さんは、それまでは安さが売りだった100円ショップの商品にデザイン性が付加され始めたことや、外国発の雑貨ショップが台頭し、低価格雑貨が当たり前な存在となったことが大きかったと話す。
3COINSも試行錯誤するものの、なかなか起死回生の一手を打ち出すことはできなかった。
事態を打開するきっかけとなったのが、同社のアプリだった。そこから顧客のデータを分析したところ、3COINSの主な顧客層が30~40代の女性であることがわかったのだ。
想定していたターゲットとは異なる結果に、「売り上げも伸び悩んでいて、自分たちはどこに向かっていくんだろうと不安を抱え、迷子になっていた中で出てきたのがこのデータ。みんなで『どうする?』と言いつつも光が見えたように思いました」と肥後さんは振り返る。