大事なのは「顧客が何を欲しているか」
売り上げの停滞とデータが示す現実を受けて、3COINSはターゲットおよびスタンスの変更に踏み切る。そして「『3COINSの商品がほしい』と思われるにはどうすればいいか」を徹底して追求した。
まずはそれまでの若い女性の部屋に好まれそうな明るい色合いやポップなデザインを一新し、30~40代の女性が生活の中で取り入れやすいカラー・デザインに変更。
「安物」のイメージの払拭に努め、見た目も品質も値段以上のものとすることにこだわった。ベビーカーを押していてもゆっくりと商品が見られるよう店舗を大型化し、内装も商品の見せ方も落ちついた雰囲気に変えた。
「店舗にしてみたら急な変化だったと思います。ですが『こうなりたい』との共通認識が徹底できていたからこそ、1~2年間のうちに変わることができました」(肥後さん)
この変化に顧客が魅せられ、メディアに取り上げられる回数も格段に増加。認知度が高まってさらに注目され、売り上げが伸びていくことで3COINS側も自分たちの方向性に自信を持ち、さらなる商品を投入していく……。こんな好循環が実現した。
40%が300円より高い商品
店内を見渡してみて、商品のデザインや店内の動線に加えて変化を感じたのが、商品の価格だ。「300円よりも高い」商品が明らかに昔より増えている。
3COINSを訪れたことのある人は「これも300円なのか」と手に取ったところ、実は300円ではなかった……という経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。筆者もその一人だ。
肥後さんに、ここ1年の売れ筋商品を聞いてみた。すると、「デバイスバンド」「ワイヤレスゲームコントローラー」「マグネットスティックジェルネイル」「ツールボックス」の4つの商品の名が挙がった。
このうち300円の商品は、マグネットスティックジェルネイルの一点しかない。デバイスバンドは現在3800円、ワイヤレスコントローラーは2500円、ツールボックスは800円(いずれも税抜)となっている。この値段だけを見れば、「とても300円ショップ」とは呼べないだろう。
ただしいずれの商品も、市場価格に比べると割安だ。大画面スマートウォッチであるデバイスバンドについて、Apple Watchと比較してみると、最も安い「Apple Watch SE」でさえ3万4800円からとなっている。それに比べれば“安すぎる”水準だ。そしてそのギャップを市場は評価した。いまや、300円より高い商品の割合は実に4割を超える。