『自己紹介させていただきます』という敬語は、正しいか?

やってはいけない話し癖③ 過剰敬語

私が担当する大学の講義では、初回に受講学生に自己紹介をしてもらいます。ある年度では受講学生80人のうちおよそ99%の学生が「自己紹介させていただきます」と話し始めました。初対面だから敬語を使ったのでしょう。

「自己紹介させていただきます」という敬語は、正しいのでしょうか?

学生たちにそう問うたところ、ほぼ全員が正しいと答えました。あなたはどう考えますか?

答えは、この講義場面では正しくありません。なぜなら「させていただく」は自分がそれを行うことについて、ふさわしいかどうかを相手に判断してもらい許可を得たい場面で使う表現だからです。課題として自己紹介を指示された場合は、「自己紹介します」が正解です。

同じように、話し始めに「させていただきます」と過剰に敬語を使うのは避けたい癖の一つです。「お話しさせていただきます」「ご説明させていただきます」などと、癖として「させていただきます」を使っていないでしょうか。

「させていただく」というのは、敬語の謙譲表現の中でも最高ランクの敬意表現です。「お話しします」「ご説明します」で十分。敬語は、使いすぎるとまわりくどく、時に慇懃無礼な印象を与えます。必要最小限で十分に敬意は伝わりますし、知的な印象も与えます。

「お話しします」「ご説明します」で十分

さらに、「思います」をつけて「お話しさせていただきたいと思います」「ご説明させていただきたいと思います」というのもすぐにやめましょう。不要な「思います」は自信のなさを伝えます。

過剰な敬語や自信のなさを伝える言葉は、相手に優位な立場を譲ってしまうことにもなります。それでは交渉や説得をすることが目的の場合、不利に働いてしまいます。

矢野香『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)

×「お話しさせていただきたいと思います」
×「お話しさせていただきます」
○「お話しします」、「ご説明します」

ただし、「させていただきます」が正しいという場面もあります。予定していなかったのに話を聞いていただけるようになったときや、普通はなかなか許されないことであるのに特別に許可をいただいて相手に対して話をしているときなどです。

そのような場面であれば「お話しさせていただきます」は正解です。相手からの許可が必要であるかいなかを判断基準としてください。

関連記事
【第1回】トヨタ・豊田章男会長もやっている…あいさつに付け足すだけで不思議と交渉がうまくいくようになる「ひと言」
「バカなの?」「はい論破」…無意識に攻撃を仕掛けてくる人の口を封じる3つの短い"切り返しフレーズ"
たった一言添えるだけで相手の反応が変わる…仕事の速い人がよく使う「依頼メール」の万能フレーズ
職場に増殖「文章を読めない人」が仕事効率を急落させる…「資料を読み上げる」が常態化した呆れた会議の実態
固定電話が"未知の通信機器"になっている…電話が鳴っても出ようとしない「令和の新入社員」の本音