仕事、人間関係、資格試験、語学…記憶力を上げれば、あらゆるシーンで人生は有利に働く。記憶力日本選手権大会で6回優勝した“記憶の専門家”池田義博さんは「まず、私にはどうせ覚えられないという気持ちを捨てることが大事」と説く。どういうことか。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします――。

※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『仕事、人間関係、資格試験、語学………成果がグングン上がる!世界記憶力グランドマスター直伝!脳力を100倍アップさせる「超記憶術」』の第1話を再編集したものです。

額に指を指して悩む男性
写真=iStock.com/Bulat Silvia
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かつてはまったく記憶に興味がなかった

いまでこそ「記憶の専門家」として活動しているわたしですが、実はもともと記憶することが得意だったわけでも記憶に興味があったわけでもありません。大学は工学部で、卒業後はエンジニアとして働いていました。

転機が訪れたのは、エンジニアになって10年くらい経った頃。父親に不幸があって家業を継ぐことになったのです。その家業というのが、学習塾の経営でした。暗記――つまり、記憶とは切っても切れない関係にあります。

そこで、塾のカリキュラム作成に活かそうと記憶について自分なりに調べたり学んだりした結果、記憶そのものに対する興味が強まっていきます。そんなときに知ったのが、記憶力を競う大会があるということでした。

当時のわたしは40代半ば。人生の折り返し地点に差し掛かっていて、「このままの人生でいいのか?」「勝負できることはないのか?」などと年がいもなく考える中年でした……(苦笑)。そこで、記憶力のトレーニングを1年間続けて記憶力日本選手権大会に挑戦し、もし箸にも棒にもかからなければ、記憶競技にのめり込むことはやめて学習塾の経営に専念しようと決めたのです。

すると、結果はなんと優勝です。その後も出場した日本選手権大会すべてで優勝し、トータル6回の優勝。オーストラリアで開催された大会でも優勝したり、世界大会で「記憶力グランドマスター」という称号を得られたりもしました。

記憶力を競う「記憶競技(メモリースポーツ)」とは

そういった記憶競技で行う種目は様々です。なかでも多いのは、数字を覚える種目でしょうか。例えば、円周率のようにランダムで並んだ数字を短時間で覚えるという種目や、1時間かけてなるべくたくさんの数字を覚えるという種目があります。あるいは、1秒間隔の音声で聞かされたランダムの数字の並びを覚える種目、「001101010……」のように0と1の並びを覚えるというものもあります。

ほかには、「無作為の単語」といって、「パンダ、パトカー、ヘッドホン……」など無作為に抽出された単語を覚えていく種目に、人の顔と名前を覚える種目も存在します。例えば、9人分の人の顔と名前がセットで並んでいるたくさんの問題用紙を見て、解答時間になったら今度は問題用紙とは並びがバラバラになった顔写真だけの解答用紙に名前を書き込んでいくといった内容です。

面白いところでは、「架空の年表」という種目もありますね。例えば、「1983年に火星人襲来」とか「2038年にミッキーマウスがアメリカ大統領に就任」といった、その名のとおり架空の年表を覚えるという種目です。