職場で「座りっぱなし」は要注意

骨盤が過前傾している人にはどのような特徴があるでしょうか。

まず、病気やケガなどで股関節を動かす機会が減ってしまい、屈曲した状態で固まってしまった「屈曲拘縮」の場合が考えられます。骨盤の前側にある大腰筋や腸腰筋が硬く縮んでしまい、骨盤が前に引っ張られて前傾するのです。デスクワークが多くて座りっぱなしの時間が長い人も注意が必要です。

ほかには、高いヒールの靴や厚底靴をよく履いている人も、骨盤が前傾しやすくなります。ヒールを履くと、かかとが上がり、骨盤も前に倒れます。そのままでは体が倒れてしまうので、上体を起こすために腰が反った状態になります。

「昔はヒールで歩くのがつらかったけれど、今はスニーカーより楽なんだよね」と言う人は、ヒールを履いた状態に体が適応した結果、反り腰の姿勢がふつうになってしまったのです。その状態が快適ならば問題ないように思われますが、体の構造から考えると、あとで股関節や腰、膝などを傷めるリスクもあります。

運動しすぎも、運動しなさすぎも危ない

もう1つ、骨盤が過前傾しがちなケースとして、「アスリート」が挙げられます。

骨盤のゆがみは運動不足が原因と思われがちなのですが、実は運動のしすぎも問題になるのです。体の使いすぎによる疲労から筋肉に炎症が起き、硬くなる現象を「短縮」といい、筋肉量が多いアスリートにも起こります。

アスリートは、非常に長い時間にわたって、股関節が屈曲した状態で運動します。例えば長距離ランナーにも骨盤過前傾の選手は多く、それが仙腸関節周辺の疲労骨折の原因になっている場合があるのです。特に女性ランナーには、日本代表クラスの選手でも骨盤が過前傾してトラブルを抱えている人が多くいます。

いずれにせよ、股関節のトラッキングを正常にするためには、筋トレやストレッチなどの運動療法が有効です。ただ、骨盤の前傾や後傾の時間が長ければ長いほど、修正には時間がかかります。

40代~50代にもなると、長い年月によりすっかり染みついた体の使い方のクセを軌道修正するのは簡単ではありません。しかし、全身のバランスを見ながら、その人に合った運動に取り組めば、トラッキングを修正していくことは可能です。