川勝前知事の退場で事態は一気に進む

結局、この問題は川勝前知事の辞職によって終止符が打たれた。

鈴木知事はことし6月、「山梨県内の調査ボーリング」だけでなく、もともとの議論の始まりとなった先進坑、本坑掘削工事でも、「『静岡県の水』という所有権を主張せず、『静岡県の水』の返還を求めないこと」に合意した。

さらに、JR東海が山梨県境を越えて、静岡県内での調査ボーリングを行うことも認めた。これで、山梨工区の調査ボーリングは何の障害もなく、進められることになった。

今回の視察で、両知事は早川町の広河原非常口から先進坑に入り、その先端付近で行われている調査ボーリングによる湧水の状況などについて、JR東海から説明を受けた。

先進坑は静岡県境まで約460メートルの地点まで掘り進められている。その地点に設置された調査ボーリングマシンの先端は県境手前の257メートルまで進んでいる。いまのところ、湧水量は管理値の0.08%という極めて微量な数値だという。

静岡県民の心配よりこれまでの迷惑を詫びるべきだった

当然、全く問題がないから、今回の視察を計画したのであり、実際には長崎、鈴木両知事の政治的なパフォーマンスの場だった。

となれば、鈴木知事は過去の経緯を踏まえて、「長崎知事にさまざまな迷惑を掛けた」ことを率直に述べるべきだった。「静岡県民に安心してもらえる状況」では前知事との間でこじれた関係性は何も前進しない。

筆者撮影
記者の質問に答える長崎知事と鈴木知事

川勝前知事時代の「言い掛かり」をうやむやにしたことで、この2年間のゴタゴタがいったい何だったのか、山梨県民らは首をかしげてしまっているだろう。それどころか、いまでも山梨県内のリニア工事が静岡県の湧水に大きな影響を与える恐れがあると考えてしまったかもしれない。

鈴木知事に求められるリニア問題の解決とは、川勝前知事時代のトラブルをきちんと総括することも含まれるはずである。

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