薬の副作用を知っておくべき

目の前に見えている信号や横断中の人々などのリアルな景色、それがリアルに見えずに、見えているのは幻視。幻の視界が広がります。幻覚が起きます。

たとえば、後ろから誰かに襲われているような感覚になり、「あー怖いー! 逃げなくては!」とハンドルを必死に回して、アクセルを踏み続ける。つまり暴走運転です。方向感覚を失えば、逆走運転にもなります。赤信号も見えません(認識できません)から、そのまま通り過ぎる。事故を起こして目が覚めたら(気づいたら)、人を撥ね殺していた、ということも当然あり得るのです。

麻薬などの薬物を飲んで運転している状態を、想像してみてください。

普通に病院で処方され、飲んでいる薬の副作用でそんな状態が起きてしまう。これは、非常に大きな問題です。

パーキンソン病患者は、全国に16万人強いるとされています。

東池袋の事故から、学ぶべきこと。それは「高齢になったら運転はやめないとね」ではなく、「運転をする前に、飲んでいる薬の副作用を知っておかないとね」です。

なぜ海外では高齢者の暴走事故が少ないのか

それにしても、どうして今日本では、高齢者が逆走や暴走事故を起こしたら、すべて年のせいだと捉えられてしまうのでしょうか。普通の感覚を持っている医者だったら「薬のせいだ」と考えるというもの。「これってせん妄とか、意識障害を起こしていたんじゃないの?」

そう導かれない社会、医療機関や報道機関も含めて、非常に残念に思います。

ちなみに、欧米では車の暴走事故がほぼ問題にならない。起きていないのです。

ドイツのような車大国でも「高齢者の暴走事故」というのは、ほとんど報道されていないそうです。

これは私が思うに、高齢者には無駄に薬剤処方がなされず、「薬づけ高齢者」が少ないからでしょう。アメリカだってそうです。

日本のような皆保険制度がありませんから、病気になったら大変です。高い医療費を払わないで済むようにと、おのずと国民に高い予防意識が根付いています。医者にかかるのも最低限。よって処方薬も少ないので、薬の副作用の問題も日本のように多くないのでしょう。