高齢ドライバーによる交通死亡事故を防ぐには、どうすればいいのか。ジャーナリストの柳原三佳さんは「免許更新制度に問題がある。試験を厳格にし、運転技能の低い人をしっかり落とす仕組みが必要ではないか」という――。
スーパーに突っ込んだ乗用車
写真=時事通信フォト
スーパーに突っ込んだ乗用車=2021年11月17日午後、大阪府大阪狭山市

3人死傷の90歳ドライバーは「禁錮3年」に

1月27日、大阪地裁堺支部は、過失運転致死傷の罪に問われていた90歳の被告に対し禁錮3年の実刑判決を言い渡しました。

※毎日新聞「大阪狭山のスーパー車暴走3人死傷 90歳被告に禁錮3年の判決」(2023年1月27日)

この事故は2021年11月、大阪府大阪狭山市のスーパーで起きました。

当時89歳だった男性が、駐車場でサイドブレーキをかけ忘れ、車がゆっくり前進したため慌てて運転席に戻るも、アクセルとブレーキを踏み間違え、店舗に激突。1人死亡、2人重体という重大事故となったのです。被害者のうち一人は男性の妻で、事故から1年3カ月たった今も意識不明だといいます。

判決前後には本件に関する多くのニュースが流れましたが、特に以下の記事は、同年代の親と暮らす者として身につまされました。

※MBSニュース「『免許返納せなあかんと…』スーパーで車暴走し3人死傷 被告の90歳高齢ドライバー 長女は『父の減軽望む気になれない』あす(27日)判決」(2023年1月26日)

父親が加害者、母親が被害者の一人となってしまった被告の長女は、法廷の証言台で、「年齢も年齢なので、免許の返納を考えていた」と証言。最後に苦しい胸の内をこう述べたといいます。

「被害者の皆様、遺族、家族の方には本当に申し訳なく思います。父に対して減軽を望む気持ちにはどうしてもなれません。許されるなら、父も高齢ですし、残りの人生を静かに送ってもらいたいですが、被害者の方のことを考えるととても複雑です」(上記MBSニュースより抜粋)

なぜ高齢者の暴走事故がなくならないのか

高齢ドライバーによる重大事故は、その後も全国各地で発生し続けています。

記憶に新しいのは、2022年11月、97歳という超高齢ドライバーの運転する車が、アクセルとブレーキを踏み違えて歩道を暴走、その後、信号待ちの車など3台に相次いで衝突した死傷事故です。

※集英社オンライン〈福島97歳暴走死傷事故〉「おかあさーん、目を覚まして」周囲は救命措置。加害者は縁石に座り現場を見つめていた…事故被害女性が惨状を告白」(2022年11月21日)