先に紹介した、福島市の97歳被告の場合、少なくとも最後の免許更新は90代だったはずですが、そのときの各種検査で、ドライバーとしての運転技能や運動・認知機能などは、どこまで適切に評価されていたでしょうか。

今となってはそれを検証することはできませんが、高齢者の運転免許更新が、あまりに安易に行われているのではないかと不安になりました。

高齢者マーク
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「落とす」ための試験が必要ではないか

ちなみに、かつて大型2輪免許は大変な難関でした。1995年からはようやく教習所で取得できるようになりましたが、当時は運転免許試験場で「中型限定解除審査」に合格しなければ取得できなかったのです。

試験の内容は、まず、車体の取り回しなどを審査する試験、その後、スラロームに一本橋、坂道発進に急制動……といった実技の本試験が待っています。その項目は多岐にわたり、ほんの少しミスをしただけでも厳しく減点されました。

受験者は、すでに中型2輪である程度の経験を積んだライダーだったわけですが、それでも合格率は平均5%。とにかく難易度の高い試験でした。私は20代のとき、この試験に挑戦したのですが、1年以上民間の練習場に通って猛練習を重ねても、12回落ち続け、13回目にやっと合格できたのです。

国としてもバイク事故を減らすため、簡単に免許を与えないようにしていたのでしょう。はっきり言って、「落とす」ための試験だったと思います。

高齢者の免許更新制度は緩すぎる

それだけに、当時の経験を振り返ったとき、現在の高齢者免許更新制度は緩すぎるのではないかと思うのです。

運転免許の更新や返納に関しては、本人の「意思」に頼るのではなく、まずは国のほうでもう少し審査のハードルを上げ、厳格に判断すべきではないでしょうか。そうなれば、高齢ドライバーのいる家族の心配も少しは軽減されるはずです。

車の運転は少しでも問題があれば、即「重大事故」につながります。被害者の立場からすれば、運転適性のないドライバーが公道でハンドルを握っていること自体、論外です。

被害を元に戻すことはできません。これ以上高齢ドライバーによる悲惨な事故が繰り返されないよう、即効性のある対策を検討していただきたいと思います。

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