2022年からは、さらに新しい制度が導入されています。旧制度との大きな違いは、75歳以上で「一定の違反歴」がある人に対して「運転技能検査」と呼ばれる実車試験が義務づけられたことでしょう。

対象となる「違反」とは、

①信号無視 ②通行区分違反 ③通行帯違反等 ④速度超過 ⑤横断等禁止違反
⑥踏切不停止等・遮断踏切立入り ⑦交差点右左折方法違反等 ⑧交差点安全進行義務違反等
⑨横断歩行者等妨害等 ⑩安全運転義務違反 ⑪携帯電話使用等

の11種類ですが、いずれも交通事故に直結する可能性の高い、危険な違反であることがわかります。

新設された運転技能試験は、東京新聞の報道によると、全国では9月末の時点で、延べ3万2206人が運転技能検査を受検しました。88.9%にあたる2万8633人が合格したそうです。都内に限れば1506人のうち1454人が合格。合格率は96.5%。不合格者は1割に満たなかったという指摘がされています。

※東京新聞「あわや事故、でも『次は大丈夫』と…高齢ドライバーの免許更新『実車試験』の実態は? 不合格は1割程度」(2022年11月30日)

バックできない母が80代で免許更新の現実

では、実際の高齢者による免許更新はどのような雰囲気で行われているのでしょうか。一例として、私の母のケースをご紹介します。まもなく88歳になる母は、すでに運転免許を自主返納していますが、82歳のとき、一度免許更新をクリアした経験があります。

当時すでに、加齢の影響で手足の関節に痛みが出ており、可動域がかなり減少していました。車を後退させる際の後方確認などもできなくなっていたので、日常ではほとんど運転することはありませんでした。

それでも、万一の災害時や緊急時に備えて、一応免許の更新だけはしておこうということになり、教習場へ出向いたのです。

そのときの母は「認知機能検査」について、次のような感想を語っていました。

「まず認知検査で聞かれたのは、今日の日付。次に、白紙の時計盤の中に指定された時刻を記入するの。最後に、4つの絵を見せられて、しばらくしてからその絵を覚えているかどうか確認するというテストがあって、大体30分くらいで終了。どれも意外と簡単で、あれで運転に必要な認知機能をどの程度判定できるのかなあ? と不思議な感じがしたわ」

運転する高齢者の手
写真=iStock.com/dszc
※写真はイメージです

「絶対落ちる」と思っていた高齢者が合格してしまう…

そして、教習コースで行われた実車指導については、

「コースを少し走ったんだけど、バック(後退)の審査はなくってほっとしたわ。ビックリしたのは、『この人は絶対に落ちるだろう』と思っていたかなりよぼよぼされたおじいさんが、ちゃんと合格していたこと。私から見ても認知機能に相当問題がありそうだったし、運転も危ない感じだったのに……、あれで免許更新できるなんて、ホントに怖いと思ったわ」

と、驚くような話をしたのです。