首都圏の特別養護老人ホームで異変が起きている。施設に入居できない待機者がいる一方で、空床率が20%~50%と異常に高い施設もあるのだ。経営コンサルタントの濱田孝一さんは「月額費用が0~9万円程度の旧型は入居待ちだが、新設されるのは月額費用が20万円程度のユニット型が多いという矛盾がある」という――。(第1回)

※本稿は、濱田孝一『高齢者住宅バブルは崩壊する』(花伝社)の一部を再編集したものです。

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首都圏の一部の特養ホームの空床率は50%に

2018年12月16日の日本経済新聞の一面トップに、「足りない特養、実際には空き、首都圏で六千人分」という見出しが躍った。日経新聞が都市圏の特養ホームを調べたところ、東京、神奈川、千葉、埼玉の特養ホーム(特別養護老人ホーム)の計13万8000床のうち6000床が空いていた。この地域の特養ホームの待機者は6万人。特に、この5年以内に開設された一部のユニット型特養ホームは空床率が「20~50%」と異常に高くなっているという。

「特養ホームでは死亡退所から次の入所まで、一定のタイムラグが生じる」
「入所者を順次受け入れるため、開所から満床になるまで半年程度かかる」

そういった施設特性を考えると、「運営上発生する通常の空所」というところもあるだろう。

ただ、記事の通り、開所から数年経過しても複数のユニットやフロアが空いたままというところも多い。入所者不足で、社会福祉・医療事業団への借入金の返済ができない社会福祉法人も増えていると聞く。この「地域全体で見れば待機者はたくさんいるのに、一部の特養ホームは空所が目立つ」という現象は、東京近辺だけの話ではない。

その理由は、大きく分けて2つある。