必要な介護人材が確保できていない

一つは、介護スタッフ不足だ。特養ホームの運営、特にユニット型特養ホームにはたくさんの介護スタッフが必要となる。当然、どれだけ待機者がいても、介護スタッフが確保できなければ受け入れはできない。

実際、首都圏の社会福祉法人の理事長と話をすると、「特養ホームの整備計画が出ても、人材確保が難しいので応募できない」「市から新しい特養ホームを作ってくれないかと依頼があるが断っている」という話も聞く。

その計画に手を上げるのは、新しく開設した社会福祉法人や、事業拡大のために四国・中国地方など他の地域からやってくる社会福祉法人だという。域内の介護人材確保の状況を十分に理解している近隣の社会福祉法人が断っているものを、そのノウハウも地の利もない事業者が参入して、必要な介護人材が確保できるはずがない。

シニア女性と介護者
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低収入者が入居できないほど高額化している

ここには、都道府県の介護保険事業計画にも問題がある。数年前、神奈川県では駅を挟んで近隣の場所に、それぞれ50~100床規模の3つの特別養護老人ホームが同時に開設された。結果、介護看護スタッフの争奪戦となり、4月の開所に合わせて必要な介護看護スタッフが確保できたのは、人材確保・育成のノウハウのある社会福祉法人のみ。残りの2つは必要数の半数しか確保できなかったという。官民ともに、計画が甘いと言わざるを得ない。

もう一つ大きな原因となっているのが、ホテルコストの高額化だ。

ユニット型特養ホームは莫大な社会保障費が投入されている一方、低所得者対策が不十分なため、年金収入しかない低資産所得層の高齢者は申し込みさえできないという課題は以前から指摘されている

加えてこの数年、オリンピックやインバウンド需要のホテルの建設ラッシュ、木材の高騰(ウッドショック)が重なり、特に都市部で整備されるユニット型特養ホームの建築費は高騰している。それが施設の居住費(ホテルコスト)に加算されるため、基準額(2006円/日)に対し、平均値でも1日2500円、なかには2倍以上の4500円というところもある。

特養ホームに支払う費用だけで月額20万円、生活費を含めると年間300万円近くになるため、近くに特養ホームが建設されても、申し込むことさえできないのだ。