介護施設の開所には行政への届け出が必要になる。ところが、介護施設の不足から、届け出のない「無届施設」が急増し、行政も黙認する状況となっている。経営コンサルタントの濱田孝一さんは「無届施設の入居者は悲惨な生活を強いられていることが少なくない。適切な介護を受ける権利を、事業者が不正に奪っているケースもある」という――。(第2回)

※本稿は、濱田孝一『高齢者住宅バブルは崩壊する』(花伝社)の一部を再編集したものです。

暗い部屋で泣く絶望的な老人
写真=iStock.com/Hartmut Kosig
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悲惨な生活を強いられている無届施設の入居者

高齢者住宅、特に要介護向け住宅には入居者保護施策が不可欠だ。

しかし、有料老人ホームとサ高住という二つの制度の狭間で指導監査体制が完全に崩壊したいま、一部の要介護高齢者・認知症高齢者は極めて劣悪な環境で、悲惨な生活を強いられている。

東京都北区の医療法人が運営するシニアマンション(無届施設)では、24時間、紐や拘束具で入居者の手足(四肢)をベッドにくくりつけるなど日常的に虐待が行われていた。その数は入居者160人中130人に上ったと報道されている。

名古屋の無届施設では、働いていた3人の介護職員が暴行罪で逮捕されている。93歳の認知症高齢者に対して暴行している様子を自らのスマートホンで撮影、動画をLINEで共有していた。その映像には鼻の中に指を入れて上に持ち上げたり、口の中に手を入れて上下に動かすなど暴行の様子や「いやいや、やめて」といった悲鳴、撮影する三人の笑い声が記録されていたという。