すれ違うライバル2車

走りに関しても、フリードは今世代から1.5リッターのe:HEVと呼ぶ新世代ハイブリッドを搭載。コイツは燃費が前より良いだけでなく、電動感と静粛性に優れ、非常に高品質。

ハイブリッド用エンジンもシエンタが1.5リッター直3エンジンなのに対し、フリードは1.5リッター直4エンジンと静かで滑らか。走りの「高品質感」でも上のクラスを食い始めているのです。

筆者撮影
新型「フリード」のパワーユニットは、直4エンジンに最高出力123PSのモーターを組み合わせた2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」(写真)と、1.5リッター直4ガソリンエンジンの2種類から選択できる。

一方、シエンタはシエンタで良さがあって前述の視界の良さ、取り回しの易さと3列目を畳んだ時のラゲッジの広さはフリードを上回りますし、モード燃費もアドバンテージあり。

なによりフリードが250万円スタートなのに対し、シエンタは199万円スタート。装備差を考えるとその差は25万円前後に縮まりますが、やはりシエンタの方が買いやすい。

両車は住む領域が着実に離れ始めているのです。

だから旧型フリードは8年も販売していた

それでいて、便利なスライドドア付きコンパクトミニバンの手堅い需要は知りつつ、競合他社、つまり日産やスズキ、ダイハツなどの参入は当分なさそうです。

出たら面白いとは思うのですが、最大の障壁はこのクラスが売れるのはほぼ日本限定であること。一部ASEAN諸国でも売れるかもしれませんが、ASEANには専用モデルが存在します。

つまり売れても年間20万台強。となると今やグローバルで商品を売る自動車メーカーとしては新規開発するには数が少なすぎるのです。だから旧型フリードも8年近く売るハメになったのです。

まさに成功が約束されたクルマともいえるコンパクトミニバン、フリード。個性や価格帯がわかれ始めた点はあっても、両車共に今後も根強く長く売れていきそうです。

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