そもそもコンパクトミニバンの種類がない

まず、需要に対し、絶対的に選択肢が足りないこと。

今や日本は少子高齢化まっしぐらですが、それでも3列シートミニバン需要は間違いなくあります。家族に子供が生まれると4~5人乗車はもちろん、両親を入れて時に6~7人は乗せたいときがあるのです。

またクルマをプライベートだけでなく仕事用に使う人にとっても、送迎用に6~7人あるいは荷物をそれなりに乗せたい時があります。それなのにコンパクトミニバンの選択肢は先述したように、フリードとシエンタしかない。

画像提供=トヨタ自動車
トヨタのシエンタ

第2の理由は両側スライドドア付きであること。

今や「スライドドア付きじゃない車はファミリーカーじゃない」と言われるほど日本はこの水平方向に開くドアに慣れ親しんでいます。軽ナンバーワンのN-BOXはもちろん、登録車販売の事実上トップであるノア&ヴォクシーもスライドドア付きミニバン。今の子どもは既にコチラの方が普通になっているのでは? と言われるほどです。

筆者撮影
新型フリードのインパネは上面が平ら。デコボコ感が少なく、前方視界を向上させている。

ミドルミニバンでは大きすぎる

第3の理由は大きな箱型ミニバンを避ける人が一定数いることです。

運転が苦手な人にとって、大きな箱型ミニバンは積極的には乗りたくない車種になります。日本にはホンダ ステップワゴン、トヨタ ノア&ヴォクシー、日産セレナと人気の全長4.7メートル級ミニバンがあります。かつてはみな、5ナンバーサイズでした。

ただし、今はセレナ標準ボディを除き、横幅は1.7メートルを超えており、例え5ナンバーであっても高さで1.8メートルを超える箱型ボディには圧迫感があります。

比べると全長4.3メートル前後のフリードやシエンタは圧倒的に乗っていて気がラクなのです。

筆者撮影
3列目は跳ね上げることができる。コンパクトなボディでありながら、荷室は広い。

かつて90年代以降のミニバンブームの時には他にもトヨタカローラスパシオや日産キューブキュービック、スタイリッシュ系ではホンダストリームやトヨタウィッシュなど3列シートのコンパクトミニバンが多発しましたが、今残っているのはこの2台のみ。当然需要も集中してしまっているわけです。