誰が審判の体調を管理するのか

審判は「マスターオブゲーム」で試合全般の進行をすべて司っている。選手に「しっかり水分を補給しなさい」と言い、少しでも苦しい表情を見せた選手はベンチに下がらせるなど、選手の健康に気遣っているが、審判自身の体調は自分で管理するしかない。

中には足がつるなど熱中症の症状が出て、控えの審判と交代する例も出てきている。選手より年長で、過酷な任務に就いている審判は、限界ぎりぎりになっている。高校野球の審判がボランティアであることを考えれば、審判問題も危機的状況だ。

前述のとおり、甲子園の大会が始まる8月初旬は、最も暑さが厳しい時期ではある。

しかし出場するのは暑熱順化ができている選手たちではある。しかも甲子園の両軍ベンチはエアコンが利いている。クーリングタイムもあるし、地方大会より厳しいとは言えない。

ただし甲子園ともなれば、選手の気持ちの入り方は地方大会とは異なっている。

今大会では開会式直後の第1試合、滋賀学園対有田工戦で両軍合わせて9失策があった。第3試合でも、智辯学園対岐阜城北戦(延長11回)で両軍合わせて11失策を記録したのは、選手たちが甲子園という大舞台で、過度に緊張していたからだろう。そういう状況では熱中症のリスクは高まる。

夏の甲子園の観客数は減っている

甲子園の内野席には「銀傘」という大屋根がついている。特に一塁側は朝から日陰になっている。しかし一三塁のアルプス席と左翼、右翼の外野席はほぼ一日中、日光に照らされる。

アルプス席に陣取る応援団は非常に厳しい状況に置かれる。救護室に運ばれる人も少なくなかった。そして、審判の過酷さは地方大会と同様だ。

阪神甲子園球場は、150億円を投じて2027年までに「銀傘」をアルプス席の上まで増築すると発表した。しかしそれが竣工しても外野席は従前のまま、直射日光にさらされる。

実は今年の甲子園は、これほど盛り上がりながら、ほとんど満員にならなかった。

2024年の総観客数は48試合で67万800人、これは昨年の63万9300人より多いが、2010年以降、コロナ禍前までは毎年80万人以上を動員していたことを考えると、寂しい状況だ。

入場料を値上げしたのが大きいのだろうが、それに加え酷暑の影響があって客足が遠のいたのではないか。

ここまで高校野球の現状を見てきて思うのは「夏の高校野球」は選手だけでなく観客や審判、スタッフにとっても過酷な環境になってきていると言うことだ。

スポーツは「する(選手)」「見る(観客)」「支える(審判やスタッフ)」の三者によって成立しているとされるが「夏の甲子園」は、誰にとっても厳しい状況になっている。