107年ぶりに夏の甲子園を制した、慶應義塾高校(神奈川)。丸刈りではない普通髪、エンジョイベースボールを掲げ理知的な指導をする監督などが話題になった中、優勝を後押しした慶應義塾大学のOB組織「三田会」にも注目が集まっている。後輩が栄冠を手にしたことで全国に強大なネットワークを築く同会は「来年予定されている1万円札の肖像画の変更をやめ、福澤諭吉先生のままにしろ」と言い出した――。
慶應義塾大学 三田キャンパス
慶應義塾大学 三田キャンパス(写真=Keio Cheer Unicorns/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「107年ぶり優勝・慶應塾高」甲子園は三田会の会場に

「みんな、ちょっとはしゃぎすぎかな」と話すのは慶應義塾大学の文系教授。「夏の甲子園」で107年ぶりに優勝を果たした慶應義塾高校(通称「塾高」)のOBだ。「自分が一番はしゃいでいるかも」と苦笑する。

決勝戦で、1回表にトップバッターの丸田湊斗選手がいきなりホームランを打つと、甲子園は慶應定番の応援歌「若き血」の大合唱に包まれた。

「テレビの画面を通して、まるで神宮球場にいるような錯覚を覚えた」

と振り返る文系教授は今でも、東京六大学野球の慶早(早慶)戦が行われていると球場に駆けつける。

「横にいるOBと肩を組み、若き血を合唱するのが塾員としての最大の喜びなのです」

気の毒だったのは決勝戦の相手、仙台育英高校の選手たちだ。5回表、慶應2死二、三塁の場面だった。丸田の左中間の打球を追った育英の中堅手と左翼手が交錯。落球し、慶應の勝利を決定づける2点が入った。甲子園を地響きのように揺るがす慶應の大声援の中で選手同士の声がかき消され、エラーを誘発したように見えた。

「ここまでなりふりかまわない声援を聞いたのは久しぶりという気がする。良くも悪くも、今回の塾高の快進撃を後押ししたのは慶應の応援団であるのはいうまでもない」(スポーツ紙記者)

その最大の基盤となったのが慶應の同窓会組織「三田会」である。当日、現役生などが陣取るアルプス席だけでなく内野や外野も関係者が埋め尽くし、甲子園は事実上の三田会会場となった。