熱中症を防ぐにはどうしたらいいか。国の熱中症対策ガイドライン策定に携わった国立環境研究所の小野雅司さんは「熱中症警戒アラートが発令されたら、原則、運動はすべきではない。8月は毎日のように発令されており、実際には危険な暑さの中でスポーツイベントや屋外作業が敢行されている。イベント主催者や企業が対策を講じるのはもちろんだが、自己防衛をしていかないと命を守ることはできない」という――。
厳しい日差しにさらされている人
写真=iStock.com/PraewBlackWhile
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危険になった日本の夏

――年々、夏の暑さは厳しくなっているように感じますが、熱中症患者は増えているのでしょうか?

消防庁では2007年から熱中症で救急搬送された人の数を公表しています。それを見ると2010年にぐんと増えて5万人を超え、2018年にまたぐんと増えて9万5137人を記録しました。この年が最多でしたが、昨年度も9万人を超えて2018年に迫る水準でした。

【図表】熱中症による救急搬送者数の推移
グラフ=小野雅司氏提供

今年7月の平均気温は1898年の統計開始以降でもっとも高く、平年値(1991~2020年)と比べると2.16℃も高くなっています。熱中症で救急搬送される人数も増えており、昨年度を上回るペースです。

――2018年はなぜ、こんなに熱中症で搬送される人が多かったのでしょうか?

この年は埼玉県熊谷市で41.1℃と観測史上もっとも高い気温を記録するなど、極端に暑い日が多かったのです。平均気温が高いということも影響しますが、それよりも極端に暑い日があると熱中症患者は増えます。

温暖化の影響というのは平均気温が上がるということだけでなく、ブレが大きくなるんですね。極端に暑い日や、極端に寒い日が出てくる。日本の場合は、冬よりも夏に極端な現象が現れています。これにはヒートアイランドの影響もあると思います。

――温暖化の影響とのことですが、対策が進めば、夏の暑さが和らぐこともあるのでしょうか?

温暖化対策が取られたとしても、すぐに効果が出るわけではありません。10年後、20年後に向けた対策なので、今、起きていることはまず止まりません。夏の暑さはますます、厳しいものになっていくと考えたほうがいいでしょう。