気温に注意するだけでは不十分

――極端に暑い日があると熱中症患者が増えるとのことですが、実際、気温何℃くらいから熱中症の危険性が出てくるのでしょうか。

最高気温が31℃を超えたあたりから増え始めて、34℃で急増します。気温が上がると体から外気に放熱できなくなるので、熱中症になりやすくなります。

【図表】日最高気温別熱中症患者発生率
グラフ=小野雅司氏提供

ただ、気をつけないといけないのは、気温だけではありません。

湿度も熱中症の発生に大きく影響します。汗は蒸発するときに熱を奪って体温を下げるわけですが(気化熱)、湿度が高いと汗が蒸発しなくなるのでそれができなくなります。なので、たとえ気温32℃でも湿度が85%あれば、気温39℃で湿度が35%のときよりも危険です(【図表3】「室内用のWBGT簡易推定図」参照)

また、輻射熱(太陽光やそれに照らされた建物などが発する熱)も体温に影響を与えます。

熱中症を防ぐためにはこれら3つを見ていく必要があるのですが、一般の方がすべてをチェックしていくのは困難です。そこで環境省では2006年から、これら3つをまとめた指標である「暑さ指数」(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を発表するようになりました。

熱中症になりやすさを示す「暑さ指数」

暑さ指数は、一般的な温度計である「乾球温度計」と湿度を測る「湿球温度計」、これに日射や輻射熱を測る「黒球温度計」の測定値をもとに算出します。湿球温度を0.7倍、黒球温度0.2倍、乾球温度0.1倍して足します。

暑さ指数の計算

このように湿球温度(※1)計の測定値がもっとも大きな割合をしめています。

【図表】室内用のWBGT簡易推定図
出典=日本気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3.1 『室内用のWBGT簡易推定図 Ver.3.1』」より

3つの温度計が揃っているのは全国11か所しかないので、そのほかの地点では気象台から得られるデータを基に実況推定値を算出(※2)して、全国840地点での暑さ指数を発表しています。

※1 湿球温度には湿度だけでなく気温の要素も含まれている。
※2 実況推定値を計算式は小野先生が考案。気温(℃)と平均風速(m/s)は、気象庁の観測点における観測値を用いる。暑さ指数(WBGT)=0.735×Ta(気温)+0.0374×RH(相対湿度)+0.00292×Ta×RH+7.619×SR(全天日射量)-4.557×SR2-0.0572×WS(風速)-4.064