高校生の野球離れが止まらない。ライターの広尾晃さんは「高校野球の指導者の責任が大きい。いまだ指導の名のもとに体罰や言葉の暴力を平然と行う指導者がいる。指導とは何かをいま一度、野球界全体で考え直すべきだ」という――。
横浜高等学校の全景&人工芝生&新校舎 2021年1月3日撮影
横浜高等学校の全景&人工芝生&新校舎 2021年1月3日撮影(写真=東経待機/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

名門高校野球部の監督による暴言

9月25日、NEWSポストセブンは、横浜高校野球部の村田浩明監督による選手へのパワハラ行為について報じた。

記事によると、9月16日に保土ヶ谷球場で行われた秋季神奈川大会3回戦〈横浜高校対向上高校戦〉で、勝利した横浜高校の村田監督は、ロッカールームで選手に向かって「頭がおかしいんじゃねぇか! コラァッ!」などの暴言を浴びせかけたという。

現場に居合わせたノンフィクションライターの柳川悠二氏がICレコーダーで録音し、その音声はNEWSポストセブン上で公開されている。

野球界の人脈、人間関係の中で記事を書いているライターが、こうした取材手法をとったことについて批判の声があるようだが、そもそもジャーナリズムは、必要であれば「取材源が秘匿したい内容であっても伝えるべきは敢えて伝える」ものだ。私見ではあるが、柳川氏の手法は否定されるべきではないと考える。

「頭がおかしいんじゃねぇか!」

この暴言が世間に広がってから、野球、スポーツ指導者の間で、議論が起こっている。

ひとつは、村田監督の指導姿勢を批判するものだ。

「村田監督は、試合結果について選手を責めているのであり、明らかな『勝利至上主義』だ。しかも『頭がおかしい』など、選手の資質に対する差別的な言葉を使っている。高校野球が教育の一環であることを考えれば、こうした言動はあり得ない。そもそも試合は、監督の采配で行われているのであり、その責任は監督にある。あたかも選手に非があるような言動は、筋違いも甚だしい」

という趣旨。

村田監督は今夏の選手権神奈川県大会決勝、慶應高校との試合では、併殺プレーの判定を巡って試合後、審判団に長時間の抗議をしたと報じられている。屈指の名門高校を預かっているプレッシャーもあるのだろう、勝利へのこだわりが強い監督だと言われている。

「エンジョイベースボール」で今夏の甲子園を制した慶應高校とは対照的な指導方針だと言えるだろう。