9月14日、阪神タイガースは18年ぶり6回目のセ・リーグ優勝を果たした。野球解説者の江本孟紀さんは「優勝の最大の要因は、岡田監督がチームに緊張感を持たせたことにある。その結果、エラー数は減り、試合終盤での逆転が増えた」という――。(第1回)

※本稿は、江本孟紀『阪神タイガースぶっちゃけ話 岡田阪神激闘篇』(清談社Publico)の一部を再編集したものです。

18年ぶりのリーグ優勝を決め、インタビューに答える阪神の岡田彰布監督(=2023年9月14日、甲子園)
写真=時事通信フォト
18年ぶりのリーグ優勝を決め、インタビューに答える阪神の岡田彰布監督(=2023年9月14日、甲子園)

岡田監督の「これまでとやり方を変えますから」の意味

私が見たところ、岡田が監督になってから大きく変わった点が三つある。一つ目は「メディアやプロ野球OBに対する対応」だ。

2020年に突如として猛威をふるった新型コロナウイルスの影響で、12球団のいずれもがメディア対応から距離を置いた。「外部からウイルスが持ち込まれて首脳陣や選手に感染してしまったら、チームの根幹を揺るがすことになりかねない」というのがその理由だったが、そのおかげで、私たち野球解説者や報道陣は球場での取材からシャットアウトされた。

球場に行っても放送局の関係者とそこそこ打ち合わせをするだけで、グラウンドに降りることができない。そんなジレンマがあった。スポーツ新聞やテレビ番組の企画で監督にインタビューできる機会が与えられた場合にかぎり、直接話すことが許された。ただし、それを実現させてもらえたのは巨人の原辰徳監督だけで、ほかの球団はコロナ対策を前面に出し、まともにインタビューすらさせてもらえなかった。

だが、岡田は監督になってほどなくして、私にこう言っていた。

「来年の春季キャンプを見ていてください。これまでとやり方を変えますから」

そうして、いざキャンプ地に足を運んでみると、首脳陣と選手の取材がOKになっていた。

あえて取材OKにしたワケ

つまり、コロナ禍前の2019年のスタイルに戻したというわけだ。これには、私はもちろんのこと、野球解説者と報道陣のほぼ全員が救われたといっていい。直接取材できないことは取材される側にとってメリットよりデメリットが多い。

球団側としては取材対応のための手続きがないので、その分の手間がなくなるのが大きい。早い話、「面倒な仕事が省かれる」というわけだ。だが、取材できない分、目の前で起きている事柄について、あることないこと書かれてしまう。この点がじつにやっかいなのだ。

たとえば、春季キャンプの中盤で、Aという主力選手が一軍から二軍に移って練習をするとしよう。この選手は開幕から逆算して調整するために、自身のコンディションのピークを3月下旬に持っていく目的で、この時期は走り込みや打ち込みといった基礎的な練習を多くしたいがために、首脳陣と話し合ってそうした措置を取ってもらったわけだ。

このことは当然、広報を通じて発表されるわけだが、取材ができない状況のままだと、「球団から出た情報は本当なのか」といぶかしがるメディアの関係者も出てくる。